はじめに:事故直後の対応が賠償額を左右する理由

交通事故は突然発生し、誰もが冷静さを失いがちです。しかし、事故直後の数分から数時間の対応が、その後の損害賠償請求や示談交渉の成否を大きく左右します。
適切な初動対応を行うことで、以下のメリットが得られます:
- ✓ 二次災害の防止と人命保護
- ✓ 過失割合の適正な判定
- ✓ 適切な賠償金の獲得
- ✓ 後遺障害認定時の有利な証拠確保
- ✓ 保険金請求の円滑化
本ガイドでは、弁護士の視点から「事故発生の瞬間」から「医療機関受診」「示談交渉の準備」まで、時系列で具体的な対応方法を解説します。
【第1章】事故発生直後の最初の3分間【超重要】
1. 安全確保の3ステップ
交通事故が発生した瞬間、最優先すべきは現場の安全確保です。パニックになりがちですが、以下の手順を冷静に実行してください。
ステップ1:車両の停止と危険防止
1. ハザードランプを即座に点灯
- ・後続車に事故発生を知らせる
- ・エンジンを停止し、サイドブレーキを確実に引く
2. 三角表示板の設置
- ・一般道:車両後方50m以上
- ・高速道路:車両後方100m以上
- ・夜間・トンネル内:発煙筒も併用
3. 車両の移動判断
- ・移動可能な軽微な事故の場合:移動前に必ず現場を撮影
- ・移動困難な場合:その場で安全確保措置を実施
- ・高速道路の場合:安全な場所への避難を最優先
ステップ2:二次災害の防止
燃料漏れやガス漏れの可能性がある場合:
- ・火気厳禁(喫煙・ライター使用禁止)
- ・スマートフォンの使用も必要最小限に
- ・夜間は懐中電灯で現場を照らし、後続車からの視認性を確保
ステップ3:エンジン停止と緊急措置
- ・エンジンを完全に停止
- ・サイドブレーキを確実に引く
- ・燃料漏れ・ガス漏れがないか目視確認
2. 負傷者救護の優先順位【法的義務】
道路交通法第72条により、負傷者の救護は運転者の絶対的義務です。
119番通報のタイミング
以下の場合は即座に119番通報してください:
- ・負傷者がいる(軽傷に見えても必ず通報)
- ・意識不明の人がいる
- ・出血している
- ・頭部や首を強打している
- ・動けない人がいる
重要ポイント:事故直後はアドレナリンの影響で痛みを感じにくいため、外見上は軽傷に見えても救急車を呼ぶことが重要です。
救護時の注意事項
❌ やってはいけないこと
- ・医療専門家でない限り、むやみに負傷者を動かさない
- ・首や背骨の損傷が疑われる場合は特に注意
- ・ヘルメットを無理に脱がせない(二輪事故の場合)
✅ 適切な対応
- ・意識の確認(声かけ・反応の確認)
- ・呼吸の確認
- ・出血部位の圧迫止血(可能な範囲で)
- ・救急隊到着まで安静を保つよう声かけ
3. 感情的対応の回避:現場での言動に注意
謝罪と過失認定の関係
「謝ると不利になる」という誤解がありますが、人道的な謝罪と法的責任の認定は別問題です。
✅ 適切な謝罪
「大丈夫ですか?ご心配をおかけして申し訳ございません」 → 人道的配慮として自然な対応
❌ 避けるべき発言
「完全に私の不注意でした」「全責任を負います」「全額補償します」 → 過失割合が未確定の段階での責任認定は避ける
現場でのNG行動
1. 口論や感情的対立
- ・相手との口論は避け、冷静に事実確認のみ行う
- ・録音・録画される可能性も考慮
2. その場での示談交渉
- ・示談は口頭でも法的拘束力を持つ
- ・現場での金銭授受は絶対に避ける
- ・「あとで相談してから決めましょう」と伝える
3. 損害賠償の念書・メモ書き
- ・過失割合が確定していない段階での念書は危険
- ・後から覆すことは極めて困難
【第2章】警察への届出【法的義務・当日中必須】
1. 110番通報で伝えるべき5項目
道路交通法第72条第1項により、交通事故発生時の警察への報告は法的義務です。人身・物損を問わず、軽微な接触事故でも必ず通報してください。
通報時に伝えるべき情報
1. 事故発生場所
- ・住所(分からない場合は近くの目印)
- ・交差点名・道路名
- ・コンビニや建物などのランドマーク
2. 事故の種類
- ・車両同士の衝突
- ・歩行者との接触
- ・単独事故(電柱・ガードレールなど)
3. 負傷者の有無と状態
- ・人数
- ・意識の有無
- ・出血の有無
- ・動けるかどうか
4. 車両の損傷状況
- ・走行可能か
- ・道路を塞いでいるか
- ・燃料漏れの有無
5. 通報者の情報
- ・氏名
- ・連絡先
2. 道路交通法で定められた5つの報告事項
警察到着後、以下の事項を正確に報告する義務があります:
(1)交通事故が発生した日時及び場所
- ・正確な年月日・時刻
- ・具体的な場所
(2)死傷者の数及び負傷の程度
- ・負傷者の人数
- ・負傷の程度(軽傷・重傷)
- ・注意:軽傷に見えても慎重に判断
(3)損壊した物及びその損壊の程度
- ・車両の損傷箇所と程度
- ・ガードレール・電柱などの施設物
- ・信号機・道路標識などの公共物
重要:電柱・ガードレールとの接触事故も通報必須
- ・電力会社や道路管理者への賠償義務が発生
- ・通報しないと道路交通法違反で処罰の対象
(4)車両等の積載物
- ・事故車両の積載物
- ・散乱した場合はその状況も報告
(5)講じた措置
- ・救護措置の内容
- ・危険防止措置の詳細
違反時の罰則
- ・報告義務違反:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
- ・救護義務違反:10年以下の懲役または100万円以下の罰金
3. 実況見分の立会いと注意点
実況見分とは
警察官が事故現場の状況を詳細に記録する手続きです。この記録が実況見分調書となり、過失割合の判定で重要な証拠となります。
立会い時のポイント
✅ やるべきこと
1. 事実のみを正確に述べる
- ・見たこと・記憶していることだけを伝える
- ・推測や憶測は避ける
2. 記憶が曖昧な場合
- ・「はっきり覚えていません」と正直に答える
- ・無理に答えを作らない
3. 図面の確認
- ・警察官が作成する図面を必ず確認
- ・間違いがあれば指摘する
❌ 避けるべきこと
- ・相手の主張に安易に同意しない
- ・不確実な情報を確定的に述べない
- ・警察官の誘導に流されない
後日の調書確認
実況見分調書は後日、交通事故証明書の基礎資料となります。内容に誤りがあれば、早期に訂正を申し出てください。
4. 物損事故と人身事故の切替
当日は物損でも後から人身に変更可能
事故当日は痛みがなくても、後日、むち打ちなどの症状が現れる場合があります。
切替可能な期間
- ・原則:事故発生から10日以内
- ・ただし、医師の診断書があれば柔軟に対応される場合も
切替に必要な書類
- ・医師の診断書(整形外科推奨)
- ・事故証明書
- ・運転免許証
5. 警察へ通報しないよう頼まれた場合の対応
加害者から「通報しないで」と頼まれたら
絶対に応じてはいけません。通報は被害者・加害者双方のためです。
加害者が通報を避けたい理由
- ・免許の点数を失いたくない
- ・保険料が上がることを懸念
- ・会社や家族に知られたくない
- ・面倒な手続きを避けたい
通報しないリスク
被害者側のリスク
- ・交通事故証明書が発行されない
- ・後からむち打ちなどが発症しても保険が使えない
- ・賠償請求の証拠が残らない
加害者側のリスク
- ・道路交通法違反(報告義務違反)
- ・懲役または罰金の対象
- ・救護義務違反でさらに重い処罰
適切な対応 「警察への通報は法律で定められた義務です。お互いのために必ず通報しましょう」 と毅然とした態度で伝える。
【第3章】証拠保全の実践テクニック
1. スマートフォン撮影の7つのポイント
事故現場の証拠は、過失割合の判定や損害賠償請求で決定的な役割を果たします。
撮影すべき7つの項目
①車両全体の撮影(4方向から)
- ・前方・後方・左側面・右側面
- ・車両全体が写るように距離を取る
- ・ナンバープレートも明確に
②損傷部位のアップ撮影
- ・傷・へこみ・破損箇所を複数角度から
- ・定規やコインを添えてサイズ感を記録
- ・車体番号(VINナンバー)も撮影
③事故現場全体の撮影
- ・道路幅員
- ・信号機の状態(色・位置)
- ・道路標識・標示
- ・横断歩道の位置
- ・路面の状況(濡れている・凍結など)
④ブレーキ痕・タイヤ痕
- ・スリップ痕の長さと方向
- ・複数箇所から撮影して長さが分かるように
⑤散乱物の位置
- ・車両部品の散乱状況
- ・ガラス片の位置
- ・積載物が散乱した場合はその範囲
⑥周囲の環境
- ・天候(雨・晴れ・曇り)
- ・時刻(明るさの状況)
- ・道路の見通し
⑦相手車両の撮影
- ・相手車両のナンバープレート
- ・損傷状況
- ・車種・色
撮影時の設定確認
スマホ設定のチェックポイント
- ・日時の自動記録:ON
- ・位置情報(GPS):ON
- ・画質:高画質モード
撮影枚数の目安:最低30枚以上 「撮りすぎ」ということはありません。あらゆる角度から記録してください。
2. ドライブレコーダー活用法
映像保護の手順
ドライブレコーダーの映像は過失割合判定の決定的証拠となります。
即座に行うべきこと
- 1.電源を切らない:上書き防止のため、エンジンを切る前に映像を保護
- 2.手動保護機能を使う:衝撃で自動保護されるが、念のため手動でも保護
- 3.SDカードを取り出す:上書きリスクを完全に排除
相手方のドライブレコーダー映像確保
相手車両にもドライブレコーダーがある場合:
✅ 依頼の仕方
「ドライブレコーダーの映像を確認させていただけますか?お互いの証拠として保存しましょう」
- ・丁寧な言葉遣いで依頼
- ・相手が拒否する場合は警察官に相談
バックアップの取り方
- ・PCに複数コピー
- ・クラウドストレージにアップロード
- ・外付けHDDに保存
重要:映像は絶対に編集しない 編集すると証拠能力が失われます。
3. 目撃者の確保と証言記録
目撃者の重要性
第三者の客観的な証言は、当事者の主張が対立した場合に決定的な証拠となります。
目撃者への依頼方法
ステップ1:丁寧に声をかける
- ・「事故を目撃されていましたら、お手数ですが証人になっていただけないでしょうか」
ステップ2:連絡先を伺う
- ・氏名
- ・住所(可能な範囲で)
- ・電話番号
- ・メールアドレス
ステップ3:簡単な証言を記録
- ・スマートフォンのメモ機能
- ・録音(必ず許可を得る)
- ・手書きメモ
目撃者が語るべき内容
- ・事故発生時の車両の動き
- ・信号の色
- ・どちらが優先道路だったか
- ・車両のスピード感
- ・一時停止の有無
防犯カメラの映像確保
近隣の店舗・施設への依頼
- ・コンビニ
- ・ガソリンスタンド
- ・商店街
- ・マンション・ビル
依頼のポイント
「交通事故が発生しました。防犯カメラに映っている可能性があるため、映像を保存していただけないでしょうか」
注意:防犯カメラの映像は数日~数週間で上書きされるため、早急な対応が必要
【第4章】相手方との情報交換
1. 必須確認事項チェックリスト
事故現場で相手方と交換すべき情報を、感情的にならず冷静に収集してください。
✅ チェックリスト
相手の身元情報
- 氏名(漢字・ふりがな)
- 住所
- 電話番号(携帯・自宅)
- メールアドレス
- 運転免許証番号
- 生年月日
車両情報
- ナンバープレート(地名・分類番号・ひらがな・一連番号)
- 車種・メーカー
- 車体の色
- 車検証の内容(車台番号など)
保険情報
- 自賠責保険会社名
- 自賠責保険証明書番号
- 任意保険会社名
- 任意保険証券番号
- 保険の契約者名(運転者と異なる場合)
勤務先情報(業務中の事故の場合)
- 会社名
- 所在地
- 電話番号
運転免許証・車検証の確認方法
適切な確認方法
- 1.「お互いの情報を確認しましょう」と提案
- 2.運転免許証を提示してもらう
- 3.スマートフォンで撮影させてもらう(許可を得る)
- 4.車検証も同様に確認
注意:口頭だけの確認は避け、必ず書類を確認してください
2. 相手が無保険の場合の対応
任意保険未加入の場合
相手が任意保険に加入していない場合でも:
- ・落ち着いて対応
- ・自分の保険会社に即座に連絡
- ・「無保険車傷害特約」や「人身傷害補償」の利用を検討
自賠責保険のみの場合
自賠責保険の補償限度額:
- ・傷害:120万円まで
- ・死亡:3,000万円まで
- ・後遺障害:等級に応じて75万円~4,000万円
超過分の請求方法
- ・相手に直接請求
- ・弁護士に依頼して回収
3. その場での示談交渉を絶対に避ける理由
示談の法的拘束力
重要:示談は口頭でも成立し、一度成立すると撤回が極めて困難
現場での示談交渉がNGな理由
1. 後遺症が判明していない
- ・むち打ちは数日後に症状が出る
- ・内臓損傷も初期段階では分からない
2. 損害額が確定していない
- ・車両の修理費が不明
- ・治療費の総額が不明
- ・休業損害が計算できない
3. 過失割合が未確定
- ・警察の調査前に決めるのは危険
- ・ドライブレコーダーの確認前に判断すべきでない
4. 冷静な判断ができない
- ・事故直後は混乱している
- ・相手のペースに乗せられやすい
適切な対応
「示談については、お互いの保険会社を通じて、後日きちんと話し合いましょう」 と毅然とした態度で伝える。
【第5章】保険会社への連絡タイミング
1. 自社への事故報告(24時間以内推奨)
連絡すべきタイミング
理想:事故現場から即座に連絡 多くの保険会社は24時間365日対応の事故受付窓口を設置しています。
報告内容
1. 契約者情報
- ・氏名
- ・証券番号
- ・連絡先
2. 事故の概要
- ・発生日時・場所
- ・事故の状況
- ・相手方の情報
- ・警察への届出の有無
3. 損害状況
- ・車両の損傷
- ・負傷者の有無
- ・物損の有無
保険会社からの案内
- ・今後の手続きの流れ
- ・必要書類の提出
- ・修理工場の手配
- ・レッカー手配(必要な場合)
2. 相手方保険会社との対応注意点
初期対応のポイント
相手方の保険会社から連絡が来た場合:
❌ やってはいけないこと
- ・過失割合について即答する
- ・損害額について安易に同意する
- ・治療の打ち切りを受け入れる
- ・示談書に安易にサインする
✅ 適切な対応
- ・「自分の保険会社に確認してから回答します」
- ・「弁護士に相談してから決めます」
- ・「書面でいただけますか」
録音の活用
相手方保険会社との通話は:
- ・録音しておくことを推奨
- ・ただし、録音の旨を伝えることが望ましい
3. 弁護士費用特約の活用
弁護士費用特約とは
自分の保険契約に付帯している特約で、弁護士費用を保険会社が負担してくれる制度です。
補償範囲
- ・弁護士報酬:300万円まで
- ・法律相談料:10万円まで
利用条件
- ・自分に過失がない、または過失が軽微な場合
- ・相手方との交渉が必要な場合
メリット
- ・自己負担なしで弁護士に依頼できる
- ・示談金が大幅に増額される可能性
- ・精神的負担の軽減
確認方法
- ・保険証券または保険会社に電話して確認してください。
【第6章】医療機関での受診【2週間ルール】
1. 事故後2週間以内の受診が重要な理由
「2週間ルール」とは
保険実務上の重要なルール:事故発生から2週間以内に医療機関を受診しないと、治療費が認められにくくなる
なぜ2週間以内なのか
1. 保険会社のマニュアル基準
- ・2週間を超えると「事故との因果関係が不明確」と判断される
- ・治療費の支払いを拒否される可能性が高まる
2. 裁判での判断基準
- ・裁判になった場合も2週間ルールは重視される
- ・例外的な事情がない限り、因果関係が否定されやすい
受診が遅れがちな状況と対策
仕事が忙しい場合
- ・土曜診療している医療機関を探す
- ・有給休暇を取得する
- ・事故当日は必ず受診する
育児中の場合
- ・家族にサポートを依頼
- ・子連れ受診可能な医療機関を検索
- ・一時保育サービスの利用
介護中の場合
- ・ショートステイの利用
- ・デイサービスの活用
- ・家族や知人に協力を依頼
重要:どんな事情があっても、2週間以内の受診を最優先してください
2. 整形外科受診のメリット
なぜ整形外科が推奨されるのか
✅ 整形外科のメリット
1.診断書の信頼性が高い
- ・医師による診断
- ・レントゲン・MRIなどの画像診断が可能
- ・保険会社や裁判所が重視
2.後遺障害認定で有利
- ・後遺障害診断書を作成できる
- ・医学的根拠に基づく診断
3.専門的な治療
- ・むち打ち、骨折、打撲などの専門治療
- ・理学療法士によるリハビリ
整骨院・接骨院との違い
| 項目 | 整形外科 | 整骨院・接骨院 |
|---|---|---|
| 診断 | ○ 可能 | × 不可 |
| 診断書作成 | ○ 可能 | × 不可 |
| レントゲン撮影 | ○ 可能 | × 不可 |
| 後遺障害診断書 | ○ 可能 | × 不可 |
| 保険会社の評価 | ○ 高い | △ 低い |
推奨:まず整形外科で診断を受け、必要に応じて接骨院を併用
3. 診断書取得と治療記録管理
診断書の重要性
診断書は、交通事故による負傷を客観的に証明する最重要書類です。
診断書に記載される内容
- ・傷病名(頸椎捻挫、腰椎捻挫など)
- ・負傷の部位
- ・負傷の程度
- ・治療期間の見込み
診断書の取得タイミング
1. 初診時
- ・人身事故への切替用
- ・会社への提出用
2. 治療終了時
- ・後遺障害診断書(症状固定後)
治療記録の管理方法
保管すべき書類
- ・診断書のコピー
- ・診療報酬明細書(レセプト)
- ・領収書
- ・通院記録(日付・診療内容)
治療日記の作成
- ・日付
- ・症状(痛み・しびれなど)
- ・日常生活への影響
- ・治療内容
保管方法
- ・ファイルにまとめて一元管理
- ・スマートフォンで写真を撮ってバックアップ
- ・クラウドストレージに保存
4. 「1か月ルール」の注意点
通院間隔が1か月以上空くと治療終了とみなされる
1か月ルールとは
- ・前回の受診から1か月以上経過すると、多くの医療機関で「治療終了」とみなされる
- ・保険会社も1か月以上の通院中断を「治療の必要性がない」と判断
通院が途絶えた場合の影響
❌ 起こりうる問題
- ・それ以降の治療費が認められない
- ・症状固定として扱われる
- ・後遺障害認定で不利になる
✅ 適切な通院ペース
- ・最低でも月1回は受診
- ・理想は週1~2回
- ・医師の指示に従う
【第7章】接触事故・軽微な事故特有の注意点
1. 「物損だから大丈夫」は危険な考え
軽微な事故でも警察への通報は必須
「ちょっとぶつかっただけ」「傷も小さいし大丈夫」という判断は危険です。
通報が必要な理由
1. 法的義務
- ・道路交通法で定められた義務
- ・違反すると罰則あり
2. 交通事故証明書が発行されない
- ・保険金請求の基礎資料
- ・証明書がないと保険が使えない
3. 後から症状が出る可能性
- ・当日は痛みがなくても、翌日以降にむち打ちが発症
- ・証明書がないと因果関係が証明できない
2. 接触事故の種類と対応
ケース1:車両同士の接触
対応手順
- 1.安全確保
- 2.警察通報
- 3.相手方との情報交換
- 4.写真撮影
- 5.保険会社へ連絡
ケース2:電柱・ガードレールとの接触
重要:施設物との接触でも通報必須
理由
- ・電柱:電力会社への賠償義務
- ・ガードレール:道路管理者(地方自治体)への賠償義務
- ・信号機・標識:道路管理者への賠償義務
通報しない場合の罰則
- ・道路交通法違反
- ・器物損壊罪の可能性
ケース3:駐車場での接触
駐車場内の事故も道路交通法が適用される場合があるため、必ず警察へ通報してください。
3. 当て逃げ・ひき逃げに遭った場合
加害者が逃げてしまったら
即座に行うべきこと
1. 相手車両の情報を記録
- ・ナンバープレート(最優先)
- ・車種・色・特徴
- ・逃走方向
2. 警察へ通報
- ・ひき逃げ・当て逃げとして報告
- ・目撃情報を詳細に伝える
3. 目撃者の確保
- ・周囲の人に協力を依頼
- ・防犯カメラ映像の確保
4. ドライブレコーダーの確認
- ・自車のドラレコ映像
- ・周囲の車両のドラレコ映像
加害者不明の場合の補償
政府保障事業
- ・加害者が不明、または無保険の場合に国が補償
- ・自賠責保険と同等の補償
- ・請求期限:事故発生から3年以内
【第8章】やってはいけないNG行動まとめ
NG行動1:現場から立ち去る
当て逃げ・ひき逃げの罪
- ・10年以下の懲役または100万円以下の罰金
- ・危険運転致死傷罪の場合はさらに重い
NG行動2:警察への通報を怠る
報告義務違反
- ・3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
- ・交通事故証明書が発行されない
NG行動3:医療機関の受診を先延ばし
2週間ルール違反
- ・保険会社から治療費が認められない
- ・因果関係が否定される
NG行動4:相手方の言いなりになる
その場での示談は危険
- ・後遺症が判明しても請求できない
- ・損害額が確定していない
NG行動5:証拠保全を怠る
写真撮影・ドラレコ保存を忘れる
- ・過失割合で不利になる
- ・損害額の証明ができない
NG行動6:保険会社への連絡を忘れる
保険金請求ができなくなる
- ・契約上の通知義務違反
- ・補償が受けられない可能性
【第9章】示談交渉の準備と弁護士相談のタイミング
1. 示談交渉が始まるタイミング
通常の流れ
- 1.治療終了(症状固定)
- 2.後遺障害認定(必要な場合)
- 3.損害額の確定
- 4.示談交渉開始
2. 弁護士に相談すべきケース
✅ 弁護士相談を検討すべき状況
- 1.過失割合に納得できない
- 2.保険会社の提示額が低い
- 3.後遺障害が残った
- 4.相手が無保険
- 5.治療費の打ち切りを通告された
- 6.死亡事故
3. 弁護士費用特約の活用
自己負担なしで弁護士に依頼
- 相談料:10万円まで補償
- 着手金・報酬:300万円まで補償
【まとめ】時系列チェックリスト
事故発生直後(0~3分)
- ハザードランプ点灯・エンジン停止
- 三角表示板の設置
- 負傷者の確認
- 119番通報(負傷者がいる場合)
現場での対応(3~30分)
- 110番通報
- 写真撮影(最低30枚)
- 相手方との情報交換
- 目撃者の確保
- ドライブレコーダー映像の保護
事故当日中
- 保険会社への連絡
- 医療機関の受診(整形外科推奨)
- 診断書の取得
事故後2週間以内
- 医療機関を必ず受診(未受診の場合)
- 人身事故への切替(必要な場合)
治療期間中
- 定期的な通院(最低月1回)
- 診療記録の保管
- 治療日記の記録
治療終了後
- 後遺障害診断書の取得(必要な場合)
- 示談交渉の開始
- 弁護士への相談(必要な場合)
おわりに
交通事故は誰にでも起こりうる出来事です。しかし、適切な初動対応と証拠保全を行うことで、その後の損害賠償請求や示談交渉を有利に進めることができます。
本ガイドの重要ポイント
- 1.安全確保と負傷者救護が最優先
- 2.警察への通報は法的義務(軽微な事故でも必須)
- 3.証拠保全は徹底的に(写真30枚以上・ドラレコ・目撃者)
- 4.2週間以内に必ず医療機関を受診
- 5.その場での示談は絶対に避ける
- 6.弁護士費用特約の活用を検討
万が一の交通事故に備えて、本ガイドをスマートフォンにブックマークするか、印刷して車内に保管しておくことをおすすめします。
複雑な手続きや交渉でお困りの際は、交通事故に精通した弁護士に相談することで、より確実な解決を図ることができます。
監修弁護士からのメッセージ
交通事故の被害に遭われた方の中には、適切な初動対応ができなかったために、本来得られるはずの賠償が受けられなかったケースを数多く見てきました。事故直後の数分から数時間の対応が、その後の人生を大きく左右します。
本ガイドが、万が一の交通事故の際に、皆様の権利を守る一助となれば幸いです。
石田 大輔
名城法律事務所サテライトオフィス 代表弁護士
