「先生に、どう伝えればいいかわからない」――その悩みは当然です
高次脳機能障害の後遺障害等級認定において、被害者・家族が最初にぶつかる壁のひとつが、「担当医師との意思疎通」です。
「症状は確かにある。でも、どう説明すればいいかわからない」「先生に話したら『様子を見ましょう』と言われるだけで、検査につながらない」「後遺障害診断書を書いてほしいが、何をどう頼めばいいか……」。こうした悩みは決して特殊なことではありません。
その背景には、医師と患者・家族の間に存在する「知識の非対称性」があります。医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定の仕組みや審査官が診断書の何を見ているかについては、必ずしも詳しいわけではありません。この記事では、その壁を乗り越えるための具体的なコミュニケーション術を解説します。
まず知っておくべき「医師の立場」
治療の専門家と、認定の専門家は違う
医師の本分は「治療」です。後遺障害等級認定の書類作成は治療行為の延長に過ぎず、認定の仕組みや保険実務に精通しているかどうかは医師によって大きく異なります。
「異常なし」と言われたとしても、それは「治療の観点からは問題ない」という意味であり、後遺障害認定において症状がないことを意味するわけではありません。CTやMRIで異常が映らなくても、機能的な損傷は存在し得ます。
「高次脳機能障害」は医師にとっても難しい領域
高次脳機能障害は、神経内科・脳神経外科・リハビリテーション科・精神科など複数の診療科にまたがる複雑な領域です。主治医が整形外科や一般内科の場合、高次脳機能障害の診断・評価に十分な経験を持っていないことがあります。これは医師の能力の問題ではなく、専門分野の問題です。
だからこそ、患者・家族側から適切な情報を提供し、専門的な評価へつなげる働きかけが必要になります。
医師が「書きにくい」理由を理解する
担当医が後遺障害診断書に積極的でない場合、その背景にはいくつかの理由が考えられます。
理由 01
症状の客観的な根拠が不十分
医師は「医学的に証明できること」しか書けません。神経心理学的検査(WAIS・TMT等)の実施が、この壁を突破する鍵になります。
理由 02
後遺障害認定の手続きに不慣れ
認定に必要な情報を患者・家族側から丁寧に伝えることが、診断書の質を高めます。
理由 03
高次脳機能障害の症状評価に不慣れ
症状は診察室ではなく日常生活で顕在化します。家族の観察記録が医師の理解を補います。
理由 04
「診察ではしっかりしている」印象
日常と診察での乖離を、日常生活状況報告書で補う必要があります。
医師へのコミュニケーション実践術
曖昧な伝え方では伝わりません。「交通事故の後遺障害等級認定のために、後遺障害診断書を作成していただきたいのですが」と、目的を最初にはっきり伝えましょう。「高次脳機能障害の疑いがあると考えており、その観点からご評価いただけないでしょうか」と、具体的に障害名を挙げることが重要です。
口頭での説明は忘れられやすく、診察時間も限られています。家族が観察した「事故前との具体的な変化」を書面にまとめ、診察時に渡すことで、医師に正確な情報が届きます。「いつ」「どこで」「何が起きたか」「事故前はどうだったか」の4点を含めて記録してください。
高次脳機能障害の診断に最も力を持つのは、WAIS・TMT・MMSE・HDS-Rなどの神経心理学的検査です。これらの検査値が診断書に記載されることで、審査官が客観的な判断をくだしやすくなります。「神経心理学的検査を受けることはできますか?」と医師に直接尋ねてみましょう。
「先生の専門外であれば、専門の先生をご紹介いただけないでしょうか」という依頼は患者の権利として当然の要求です。高次脳機能障害支援センター(各都道府県に設置)・リハビリテーション病院・神経内科/脳神経外科の専門外来が対応機関の目安です。
「診断書に書いてほしいこと」を医師に伝えるとき
後遺障害診断書は医師が作成するものですが、審査上重要な観点を患者・家族が伝えることは適切な行為です。以下の点を意識して依頼してください。
「高次脳機能障害」という診断名だけでなく、「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」のうち該当するものを具体的に記載してもらいましょう。
「就労継続が困難」「一人での外出が難しい」「判断能力に制限がある」といった具体的な機能制限の記載をお願いします。等級判断の核心です。
画像所見がなくても、臨床症状から後遺障害の可能性がある旨を記載いただけるか確認してください。「断言できない」場合でも「疑いがある」という記載が可能かを尋ねましょう。
「日によって差がある」という記述は「継続性がない」と誤読されるリスクがあります。「疲労時・ストレス下で著明に悪化する変動性のある症状」と記載してもらうよう依頼してください。
弁護士による「医療サポート」とは何か
高次脳機能障害のケースでは、治療段階から弁護士が介入することに大きな意味があります。後遺障害認定は「証拠の積み上げ」であり、その証拠は治療の過程でしか作れません。
サポート 01
必要な検査・記録の事前指示
認定に必要な神経心理学的検査の種類、画像検査のタイミング、リハビリ記録の残し方について、法的な観点から逆算した指示を出します。
サポート 02
担当医への情報提供サポート
「先生に何をどう伝えればよいか」という場合、弁護士が書面を準備します。本ページのPDFもその一環です。
サポート 03
後遺障害診断書の事前確認
医師が作成した診断書を弁護士が事前に確認し、認定に必要な記載が揃っているかをチェックします。一度提出してしまった書類の修正は非常に困難です。
サポート 04
専門医紹介ネットワークの活用
「今の担当医では限界を感じている」という場合、弁護士経由での専門医受診が突破口になることがあります。
医師が「高次脳機能障害に詳しくない」場合の対処法
最も多い悩みのひとつが「担当医が高次脳機能障害に詳しくない」というケースです。こうした状況では、以下の対応を段階的に試してください。
まず書面で情報を届けましょう。口頭での説明より、印刷したメモを診察の際に渡す方が、医師に情報が確実に届きます。上部の無料PDFをご活用ください。
「WAIS等の神経心理学的検査の実施をお願いしたい」と具体的な検査名を挙げて書面で依頼することで、医師が対応しやすくなります。
各都道府県に設置された高次脳機能障害支援センターは専門的な評価が使命です。担当医に「支援センターへの紹介状をいただけますか」と伝えてみましょう。
現在の担当医での診断に限界を感じる場合、セカンドオピニオンは患者の正当な権利です。弁護士に相談し、高次脳機能障害の評価実績がある医療機関の情報提供を受けることを検討してください。
まとめ:「伝える努力」が、認定結果を変える
- 医師は治療の専門家であり、後遺障害認定の実務に精通しているとは限らない。患者・家族側から適切な情報を届けることが診断書の質を左右する。
- 「後遺障害診断書をお願いしたい」「高次脳機能障害の評価をしてほしい」と目的と障害名を明確に伝えることが出発点。曖昧な訴えは曖昧な診断書につながる。
- 事故前との変化を書面にまとめて渡すことで、診察室では見えない症状の実態が医師に届く。
- 神経心理学的検査の実施依頼、専門医への紹介依頼は患者の正当な権利。遠慮せず行使してほしい。
- 弁護士が治療段階から介入することで、証拠の積み上げ・診断書の事前確認・専門医紹介という3つの医療サポートが得られる。
- 担当医が詳しくない場合は、書面での依頼→検査依頼→支援センター→セカンドオピニオンという段階的アプローチで打開する。
「先生に何を伝えればいいか
わからない」という方も、
まずはご相談ください。
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※本記事は法的・医療的アドバイスを目的とするものではありません。具体的なご状況については、専門の医師・弁護士にご相談ください。
