監修 石田 大輔 (いしだ だいすけ)
名城法律事務所サテライトオフィス 代表
所属 / 愛知県弁護士会 (登録番号42317)
保有資格 / 弁護士
「骨はくっついたから治療終了」と言われても、関節が事故前のように動かなければ後遺障害が認められる可能性があります
交通事故で肩、肘、手首、股関節、膝、足首などを骨折し、治療やリハビリを続けたにもかかわらず、「腕が上まで上がらない」「膝が十分に曲がらない」「足首が固まって歩きにくい」といった症状が残ることがあります。
骨折そのものが治癒していても、関節の動く範囲が事故前より狭くなった場合には、「関節機能障害」として後遺障害等級が認定される可能性があります。特に重要になるのが、患側の関節可動域が、反対側の正常な関節(健側)と比較してどの程度まで制限されているかです。
大まかな目安としては、次の段階で評価されます。
- ① 関節の用を廃した状態 → 8級
- ② 可動域が健側の2分の1以下 → 10級
- ③ 可動域が健側の4分の3以下 → 12級
国土交通省の後遺障害等級表では、上肢について「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」が8級6号、「機能に著しい障害を残すもの」が10級10号、「機能に障害を残すもの」が12級6号とされています。下肢については、それぞれ8級7号、10級11号、12級7号です。(国土交通省)
ただし、「健側の半分しか動かないから必ず10級」というほど単純ではありません。骨折部位と可動域制限との因果関係、画像所見、治療経過、症状固定時の状態、可動域の測定方法などを総合して認定されるためです。この記事では、交通事故による骨折後に残る可動域制限について、8級・10級・12級の違いから、肩・肘・手首・股関節・膝・足首の部位別基準、適切な認定を受けるための実務上のポイントまで整理します。
骨折後に問題となる「関節機能障害」とは
骨折後の後遺障害というと、「骨が変形した」「骨がくっつかなかった」といった状態を想像しがちですが、実際には骨折によって関節の動きが制限されることも重要な後遺障害です。例えば、次のようなケースです。
- 上腕骨近位部骨折後に肩が上がらない
- 肘頭骨折・橈骨頭骨折後に肘を十分に曲げ伸ばしできない
- 橈骨遠位端骨折後に手首が反らない
- 大腿骨頸部骨折後に股関節が曲がらない
- 脛骨高原骨折後に膝が十分に曲がらない
- 足関節果部骨折後に足首が動かしにくい
このような症状が、治療を続けても改善が期待できない「症状固定」の状態になった場合、残った可動域制限について後遺障害等級認定を申請することになります。重要なのは、「骨折した」という診断名そのものに等級が付くわけではないという点です。同じ骨折でも、ほぼ元通り動くようになった人と、関節がほとんど動かなくなった人では後遺障害の評価は大きく異なります。
【一覧】骨折後の可動域制限で問題となる8級・10級・12級
上肢・下肢の三大関節について整理すると、基本的な考え方は次のようになります。
| 等級 | 障害の程度 | 可動域等の主な目安 | 上肢 | 下肢 |
|---|---|---|---|---|
| 8級 | 関節の用を廃したもの | 強直など、関節機能をほぼ失った状態 | 8級6号 | 8級7号 |
| 10級 | 関節の機能に著しい障害を残すもの | 原則として健側の可動域の1/2以下 | 10級10号 | 10級11号 |
| 12級 | 関節の機能に障害を残すもの | 原則として健側の可動域の3/4以下 | 12級6号 | 12級7号 |
国土交通省の現行等級表では、これらの障害がそれぞれ8級・10級・12級として定められています。(国土交通省) 関節可動域の一般的な評価方法では、原則として障害が残った関節と健側の可動域を比較します。健側にも障害があるなど比較が適切でない場合には、参考可動域角度を用いる考え方があります。(厚生労働省)
ただし、8級だけは単純に「健側の○%以下」と覚えるべきではありません。
【8級】「関節の用を廃したもの」とは
上肢では8級6号、下肢では8級7号が問題になります。8級は、単なる可動域制限ではなく、その関節の機能を実質的に失った「用廃」の状態です。(国土交通省) 一般的な関節機能障害の評価では、次のような状態が「関節の用を廃したもの」に該当するものとして整理されています。
- 関節が強直したもの
- 関節が完全弛緩性麻痺またはそれに近い状態になったもの
- 人工関節・人工骨頭を挿入置換し、可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの
強直とは、関節が完全に動かない状態だけではありません。一般的な関節可動域評価では、健側の可動域の10%程度以下に制限されている状態も「完全強直に近い状態」として扱われています。(厚生労働省) 例えば、交通事故による重度の膝関節内骨折後に膝がほとんど曲がらなくなった場合や、重度の肩関節周辺骨折によって骨性強直を残した場合などには、8級が問題となる可能性があります。
一方、「かなり動かしにくい」というだけで8級になるわけではありません。8級は関節としての機能をほぼ失っているかどうかが重要な境界線です。
【10級】可動域が健側の2分の1以下なら「著しい機能障害」
骨折後の可動域制限で比較的争点になりやすいのが10級です。上肢では10級10号、下肢では10級11号として、「一上肢(一下肢)の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」が規定されています。(国土交通省) 一般的な関節可動域評価では、患側の可動域が健側の2分の1以下に制限されている状態が、「関節の機能に著しい障害を残すもの」の基準となります。(厚生労働省)
例えば健側の膝が、伸展0度・屈曲140度で合計可動域が140度であるのに対し、患側が70度以下しか動かなければ、数値上は2分の1以下となります。
ただし、測定値だけを切り取って判断するのは危険です。骨折の形態、関節面の損傷、手術内容、画像上の変形、拘縮の存在などから、なぜその関節が動かないのかという医学的な説明がつながっていることが重要です。
【12級】可動域が健側の4分の3以下なら「機能障害」
上肢では12級6号、下肢では12級7号として、「一上肢(一下肢)の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」が定められています。(国土交通省) 一般的な評価では、患側の関節可動域が健側の4分の3以下に制限されていることが一つの基準です。(厚生労働省) 例えば、健側の足関節の屈曲・伸展を合計した可動域が60度であれば、患側が45度以下であるかが一つの目安になります。
12級は10級より軽い可動域制限ですが、事故後の日常生活では無視できない支障となることがあります。手首ならパソコン操作、調理、荷物の持ち運び、車の運転、膝なら階段昇降やしゃがみ込み、足首なら長距離歩行や段差などに影響する可能性があります。
【部位別】肩・肘・手首・股・膝・足首は何を測るのか
可動域認定で非常に重要なのが、「どの方向の動きを測るのか」です。単に「肩が120度動きます」という数字だけでは評価できません。関節ごとに、等級判定で重視される「主要運動」が異なるからです。厚生労働省が公表する関節可動域評価方法では、主な関節について次のように整理されています。(厚生労働省)
肩関節
- 主要運動屈曲/外転・内転
- 参考運動伸展/外旋・内旋
肩は特に注意が必要です。屈曲と外転・内転という複数の主要運動があり、そのいずれか一方が基準を満たすかどうかを検討します。一般的な評価方法では、肩関節の主要運動のいずれかが健側の2分の1以下なら著しい機能障害、4分の3以下なら機能障害として評価されます。(厚生労働省) 上腕骨近位端骨折、肩甲骨骨折、肩関節周辺の骨折脱臼などでは特に問題になります。
肘関節
- 主要運動屈曲・伸展
原則として屈曲と伸展を合わせた運動範囲で評価します。上腕骨遠位端骨折、肘頭骨折、橈骨頭骨折などでは、骨折そのものが治癒しても拘縮によって肘の曲げ伸ばしが制限されることがあります。
手関節
- 主要運動屈曲・伸展
- 参考運動橈屈・尺屈
橈骨遠位端骨折は交通事故でも比較的多く、骨癒合後に手首の掌屈・背屈制限が残ることがあります。前腕の回内・回外にも制限が残った場合には別の評価が問題になることがあります。一般的な障害認定基準では、前腕の回内・回外が健側の4分の1以下なら10級、2分の1以下なら12級に準じて評価する考え方も示されています。(厚生労働省)
股関節
- 主要運動屈曲・伸展/外転・内転
- 参考運動外旋・内旋
大腿骨頸部骨折、骨頭骨折、寛骨臼骨折などでは、治療後に股関節の可動域制限が残る可能性があります。股関節も肩関節と同様に主要運動が複数存在するため、それぞれの運動について評価する必要があります。(厚生労働省)
膝関節
- 主要運動屈曲・伸展
大腿骨遠位端骨折、脛骨高原骨折、膝蓋骨骨折などでは、関節面の損傷や長期間の固定によって膝関節拘縮が残ることがあります。「正座できない」「深くしゃがめない」という生活上の支障だけでなく、実際の可動域角度が重要になります。
足関節
- 主要運動屈曲・伸展
脛骨・腓骨の遠位部骨折、足関節果部骨折、距骨周辺の骨折などでは、足首の底屈・背屈制限が問題になります。歩行できているからといって後遺障害が否定されるわけではありません。反対に、「歩くと痛い」という訴えだけで関節機能障害が認定されるわけでもなく、関節可動域と医学的原因を切り分ける必要があります。
「健側との比較」が原則――正常値との比較ではない
後遺障害認定で間違えやすいのが、医学書などに掲載された「正常可動域」と患側を直接比較してしまうことです。関節の柔軟性にはもともと個人差があります。そのため一般的な関節機能障害の評価では、原則として本人の反対側の正常な関節を基準に患側と比較する方法が採られます。(厚生労働省)
例1:12級相当が検討対象
健側の約67%(4分の3以下・2分の1超)
例2:10級相当が問題に
健側の2分の1以下
例1では、数値だけをみれば4分の3以下ですが2分の1以下ではないため、12級に相当する可動域制限が一つの検討対象になります。例2では、患側は健側の2分の1以下となり、10級相当の可動域制限が問題になります。
ただし、反対側にも過去の骨折や変形性関節症などがある場合には、健側との単純比較が適切でないことがあります。その場合は、参考可動域角度などを用いた評価が必要になることがあります。(厚生労働省)
可動域は「屈曲だけ」を見るとは限らない
関節可動域は、同じ面上の運動について原則として合計して評価します。例えば肘関節で、伸展10度・屈曲100度という場合、単純に「屈曲100度だから100度」と判断するのではなく、その関節全体として動ける範囲を確認します。厚生労働省の関節可動域評価方法でも、屈曲と伸展など同一面上の運動は、原則として両者の可動域を合計して評価するとされています。(厚生労働省)
ただし、肩関節では屈曲が主要運動、伸展が参考運動であるため、屈曲と伸展を単純合算しません。このような測定ルールを理解せず、診断書に数字だけが並んでいると、被害者本人が考えていた等級と認定結果が食い違うことがあります。
「少しだけ基準を超えたら認定されない」のか
例えば10級の基準が2分の1以下であるのに、主要運動がわずかに2分の1を上回った場合、「それだけで10級は絶対に無理」とは限りません。一般的な関節機能評価では、主要運動が基準をわずかに上回る場合でも、参考運動が2分の1以下または4分の3以下に制限されていれば、著しい機能障害または機能障害として評価する考え方があります。この「わずかに」は原則5度とされ、一部の主要運動については10度とされています。(厚生労働省)
例えば肩関節については、主要運動である屈曲が基準をわずかに上回っていても、参考運動である外旋・内旋にも相応の制限がある場合、総合的な評価が必要です。したがって、1方向の測定値だけを見て等級該当・非該当を決めつけるべきではありません。
【重要】可動域が基準内でも「自動的に」等級認定されるわけではない
ここが最も重要です。患側の可動域が健側の2分の1以下だからといって、それだけで10級が保証されるわけではありません。一般的な障害認定基準でも、関節の機能障害については、その原因を無視して機械的に角度だけを測定してはならず、関節そのものの器質的損傷、軟部組織の変化、神経麻痺、疼痛など、可動域制限の原因を確認する必要があるとされています。(厚生労働省)
交通事故による骨折の場合には、少なくとも次の対応関係を確認することが重要です。
この流れが医学的資料から説明できるほど、可動域制限の信用性は高まります。
【認定で重要な5要素】角度以外に何を見られるのか
骨折部位と関節可動域制限との整合性
例えば膝関節面に及ぶ脛骨高原骨折後に膝関節拘縮が残っているのであれば、医学的な説明は比較的つながりやすくなります。一方、関節から離れた単純骨折で良好に骨癒合しているにもかかわらず極端な可動域制限が記録されている場合には、原因についてより詳細な説明が必要になります。
画像上の客観的所見
X線、CT、MRIなどに、関節面の不整、骨癒合後の変形、骨片転位、関節内骨折、骨壊死、変形性関節症、軟骨損傷などが残っていれば、可動域制限との関係を説明しやすくなります。
治療・リハビリの経過
事故直後だけ動かなかったのか、治療中を通して継続して制限されていたのかも重要です。症状固定直前になって突然大きな可動域制限が記載されるより、リハビリ記録などにも一貫して制限が記録されている方が、症状経過を説明しやすくなります。
症状固定時の正確な測定
後遺障害診断書には、関節可動域を正確に測定して記載してもらう必要があります。一般的な関節可動域評価では原則として他動運動による測定値が用いられますが、神経麻痺や強い疼痛など、他動値を採用することが適切でない場合には自動運動も考慮されます。(厚生労働省)
事故との因果関係
もともと変形性関節症、過去の骨折、関節拘縮などがあった場合には、「現在の制限のすべてが今回の交通事故によるものなのか」が問題になることがあります。事故前の診療記録や画像との比較が重要になるケースです。
【部位別】特に認定で注意したいポイント
肩:測定方法と肩甲骨の動きに注意
肩は可動範囲が大きく、測定方法による差が生じやすい関節です。また、肩甲上腕関節だけでなく肩甲骨自体も動くため、重度障害では画像所見と可動域を合わせて確認することが重要です。一般的な障害認定基準でも、肩甲上腕関節が骨性強直している場合について特別な取扱いが示されています。(厚生労働省)
肘:屈曲と伸展をセットで確認
「肘が曲がらない」だけでなく、「最後まで伸びない」場合にも可動域全体が狭くなります。肘頭骨折などでは伸展制限も残りやすいため、両方向を確認することが重要です。
手首:前腕の回内・回外も確認
橈骨遠位端骨折などでは、手関節の屈曲・伸展だけでなく、手のひらを上・下に返す回内・回外にも制限が残ることがあります。手首だけ測定して終了すると、重要な障害を拾えていない可能性があります。
股関節:人工骨頭・人工関節にも注意
大腿骨頸部骨折などでは人工骨頭・人工関節への置換が行われる場合があります。一般的な障害認定基準では、人工関節・人工骨頭置換後の可動域によって「用廃」または「著しい機能障害」として評価する考え方が示されています。(厚生労働省)
膝:可動域だけでなく関節面の損傷も重要
脛骨高原骨折などでは、骨癒合していても関節面の段差や変形が残ることがあります。可動域制限と画像所見をセットで確認することが重要です。
足首:歩ける=障害なしではない
足関節の可動域が制限されても、平地ではある程度歩ける場合があります。しかし、階段、坂道、長時間歩行、しゃがみ動作などへの影響が残ることがあります。後遺障害認定では生活上の不便だけではなく、可動域制限とその医学的原因を客観的に示すことが重要です。
【否定・低い等級になりやすいパターン】何が足りないのか
可動域が正確に記載されていない
「右肩挙上困難」「右膝拘縮」など症状だけが記載され、具体的な角度が不足しているケースです。これでは8級・10級・12級の判定材料が足りません。
健側の測定値がない
患側だけ測定しても、原則となる健側との比較ができません。左右両方の可動域を測定することが重要です。
骨折と制限の医学的つながりが弱い
画像では骨折がきれいに治っているのに極端な可動域制限がある場合などには、その原因が何なのかを説明する必要があります。拘縮、軟部組織損傷、関節面損傷など、医学的根拠を確認します。
症状固定時だけ数値が悪化
リハビリ中の記録では比較的動いていたのに、後遺障害診断時だけ大幅に可動域が低下していると、測定値の信用性が問題になる可能性があります。
「痛くて動かせない」と「関節が動かない」の未整理
疼痛による運動制限と、骨・関節の器質的変化による可動域制限は同じではありません。原因に応じた検査・記載が必要です。
可動域が3/4を超えていたら後遺障害は認められないのか
必ずしもそうではありません。可動域制限が12級6号・7号の基準に届かなくても、骨折後に痛みなどの神経症状が残っているケースがあります。国土交通省の後遺障害等級表には、別の等級もあります。(国土交通省)
- 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの
また、骨折後に骨の著しい変形が残った場合には、関節機能障害とは別に変形障害が問題になることがあります。つまり、「可動域が4分の3以下ではなかった=後遺障害は何もない」とは限りません。骨折後に何が残ったのかを、可動域・疼痛・変形・神経障害などに分けて評価する必要があります。
【立証書類のポイント】後遺障害申請前に何を確認するべきか
骨折後の関節機能障害では、次の資料が重要になります。
医療機関で確認するもの
- 後遺障害診断書
- 患側・健側双方の関節可動域測定値
- X線画像
- CT・MRI画像
- 手術記録
- リハビリテーション記録
- 症状固定までの診療記録
特に後遺障害診断書で確認すること
- 骨折名・部位が正確か
- 症状固定日が適切か
- 自覚症状が具体的に記載されているか
- 患側・健側の可動域が記載されているか
- 必要な運動方向がすべて測定されているか
- 画像所見が記載されているか
- 将来の改善可能性について記載されているか
診断書は単なる「申請用紙」ではありません。等級認定の判断材料を医学的に整理した重要な証拠です。
「適切な等級認定」を目指すための3つの戦略
症状固定前に可動域を確認する
症状固定後に初めて「何度動くか」を知るのでは遅い場合があります。リハビリ中から定期的に測定値を確認し、改善の推移を把握しておくことが有効です。
メリット症状の経過を時系列で説明でき、症状固定時の測定値との整合性を確認できます。
デメリット治療途中では可動域が変化するため、一回の数値だけで将来の等級を判断することはできません。
画像所見と可動域制限をセットで整理する
「肩が90度しか上がらない」という結果だけではなく、「なぜ90度しか上がらないのか」まで説明できる資料を揃えます。
メリット骨折と現在の障害との因果関係を説明しやすくなります。
デメリット画像上の異常と実際の可動域制限が必ず一致するわけではなく、医師による医学的評価が必要です。
後遺障害申請前に診断書と検査資料を精査する
一度非該当や想定より低い等級が認定された後に異議申立てをするより、最初の申請段階で必要資料を整える方が合理的です。
メリット必要な検査や記載漏れを申請前に確認できます。
デメリット医学的事項については弁護士だけで判断できないため、主治医や必要に応じて専門医との連携が必要になります。
非該当・12級だった場合、結果を変えることはできるのか
後遺障害認定の結果に納得できない場合には、異議申立てを検討できる場合があります。国土交通省も、自賠責保険金の支払金額や後遺障害等級などについて異議がある場合、損害保険会社等に対する異議申立ての手続きがあることを案内しています。(国土交通省) ただし、「10級だと思うので再審査してください」という主張だけでは意味がありません。初回認定の理由を確認し、次の点を分析したうえで、新しい医学的資料を追加することが重要です。
- 可動域の測定方法に問題がなかったか
- 必要な運動方向が測定されていたか
- 骨折と可動域制限との因果関係が十分説明されていたか
- CT・MRI等の画像資料が不足していなかったか
- 医師の意見書等で補強できる事項がないか
異議申立ては「もう一度同じ資料を出す手続き」ではなく、前回の認定理由を医学的・法的に補強して覆す手続きと考えるべきです。
まとめ:骨折後の等級は「どれだけ動かないか」と「なぜ動かないか」で決まる
この記事のポイントを整理します。
- ①交通事故による骨折後に肩・肘・手首・股関節・膝・足首などの可動域制限が残った場合、関節機能障害として後遺障害が認定される可能性があります。
- ②一つの関節の用を廃した状態は8級、可動域が原則として健側の2分の1以下なら10級、4分の3以下なら12級が主な検討対象となります。
- ③可動域は原則として健側との比較で評価し、肩・股関節などでは複数の主要運動を確認する必要があります。
- ④単純な角度だけではなく、骨折部位、画像所見、手術内容、治療・リハビリ経過などから「なぜ可動域制限が残ったのか」を医学的に説明できることが重要です。
- ⑤12級の可動域基準に達しなくても、疼痛などの神経症状や骨の変形によって別の後遺障害等級が問題になる場合があります。
- ⑥適切な等級認定を受けるためには、症状固定後になって慌てるのではなく、症状固定前から可動域測定、画像所見、診療記録、後遺障害診断書を確認しておくことが重要です。
「骨はくっついているので問題ありません」と言われても、事故前と同じように関節が動かなければ、それで損害がなくなったわけではありません。特に8級・10級・12級の境界付近では、数度の違いや測定する運動方向、健側との比較方法によって評価が変わる可能性があります。保険会社から示談案が提示される前に、残っている症状がどの後遺障害に該当する可能性があるのか、必要な検査や診断書の記載が揃っているのかを確認することが重要です。
骨折後の可動域制限で後遺障害申請を検討している方へ
肩が上がらない、肘や膝が十分に曲がらない、手首・足首が事故前のように動かないなどの症状が残っている場合には、症状固定や後遺障害診断書の作成前に、現在の可動域と画像所見を確認してください。特に、健側の2分の1・4分の3付近にある場合や、人工関節・人工骨頭への置換、関節内骨折、変形治癒などを伴うケースでは、後遺障害等級が損害賠償額を大きく左右する可能性があります。一度示談が成立すると、後から適切な後遺障害等級に基づく損害を追加請求することは原則として困難になります。示談前に、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士と医療面を含めて検討することが重要です。
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骨折後に肩・肘・手首・股関節・膝・足首などの動かしにくさが残っている方へ。症状固定・後遺障害診断書の作成前に、現在の可動域と画像所見を踏まえて、どの後遺障害等級が問題になりうるか、必要な検査や診断書の記載が揃っているかを一緒に確認します。示談前に、まずは現状の整理から始めてみてください。
無料相談を予約する※本記事は一般的な交通事故・後遺障害制度について解説するものであり、法的・医学的アドバイスを目的とするものではありません。関節可動域の評価や後遺障害等級は、骨折部位、事故態様、既往症、画像所見、治療経過、測定方法などによって個別に判断されます。具体的なケースについては、交通事故に詳しい弁護士および担当医にご相談ください。
