監修 石田 大輔 (いしだ だいすけ)
名城法律事務所サテライトオフィス 代表
所属 / 愛知県弁護士会 (登録番号42317)
保有資格 / 弁護士
わずか5度・10度の違いで等級判断が変わることも――後遺障害診断書を提出する前に「測り方」を確認してください
交通事故で肩、肘、手首、股関節、膝、足首などを骨折し、治療後も関節が動きにくくなった場合、「関節機能障害」として後遺障害等級が問題になることがあります。その認定で極めて重要になるのが、関節可動域(ROM:Range of Motion)の測定値です。
例えば、患側の可動域が健側の2分の1以下なのか、それとも2分の1を少し上回っているのか。3分の2程度なのか、4分の3を超えているのか。わずかな測定値の違いが、10級・12級といった後遺障害等級を検討するうえで重要になる場合があります。
ところが、ここで注意しなければならないことがあります。医師が医学的に「間違った診療」をしているわけではなくても、次のような理由で、後遺障害認定に必要な形式としては不十分な測定記録になっていることがあります。
- 患側しか測っていない
- 自動運動なのか他動運動なのか分からない
- 主要運動の一部が測定されていない
- 測定時の肢位が基準と異なる
- 肩を測ったときに体幹まで一緒に動いている
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会は、関節可動域を共通の基盤で評価するため、「関節可動域表示ならびに測定法」を制定しており、2022年4月にも改訂されています。そこでは、基本肢位、基本軸、移動軸、測定姿勢、他動・自動運動の扱いなどが具体的に定められています。この記事では、交通事故による骨折後の可動域制限について、次の点まで実務的に解説します。
- 正しい可動域測定の基本
- 主要運動と参考運動の違い
- 測定値がずれる典型的な原因
- 後遺障害診断書の数値がおかしいときの対応
- 医師に再測定・修正を依頼するときの伝え方
- 自宅でできる簡易セルフチェック
そもそも「関節可動域測定」とは何を測っているのか
関節可動域とは、関節をどこからどこまで動かせるかを角度で表したものです。肩であれば腕を前方に上げる「屈曲」、横に上げる「外転」、手首であれば掌側に曲げる「屈曲」と手の甲側に反らす「伸展」、足首なら「背屈」「底屈」などを測定します。
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会の2022年改訂基準では、原則として基本肢位を0度とし、角度計を用いて関節の可動域を測定します。角度計は十分な長さの柄を持つものを使用し、通常5度刻みで測定するとされています。
したがって可動域測定は、「先生が腕を見ながらだいたい90度と判断する」というものではありません。決められた基本軸と移動軸に角度計を合わせ、決められた姿勢で測ることが基本です。
【最重要】「自動運動」と「他動運動」を混同しない
可動域測定には大きく2種類あります。
本人が自力で動かす
患者本人が自分の力で関節を動かしたときの可動域です。例えば「自分では肩を80度までしか上げられない」という測定です。
医師等が動かす
医師や理学療法士などが患者の腕や脚を動かして測定する可動域です。例えば「自分では80度までだが、力を抜いて医師が動かすと110度まで動く」ということがあります。
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の測定法では、関節可動域は自動・他動のどちらでも測定できますが、原則として他動運動による測定値を表記し、自動運動を使用した場合はその旨を明記するとされています。厚生労働省の障害等級認定基準でも、原則として同学会の測定法に従った他動運動による数値を用いながら、末梢神経麻痺や耐え難い疼痛など、他動値を採用することが適切でない場合には自動運動を参考に評価する考え方が示されています。
つまり、「自分では動かないから、その角度がそのまま後遺障害の可動域になる」とは限りません。逆に、神経障害などによって他動では動くのに自分では動かせない場合もあります。何が原因で動かないのかまで含めて確認する必要があります。
「健側」も必ず確認する――患側だけでは等級判断ができない
交通事故による関節機能障害では、通常、障害が残った側だけでなく、反対側の正常な関節との比較が重要になります。厚生労働省の障害認定基準では、関節機能障害について原則として健側の可動域との比較によって評価し、健側との比較が適切でない場合には参考可動域を用いる考え方が示されています。
例えば、健側の肩屈曲170度/患側の肩屈曲80度であれば、患側は健側の約47%です。一方、患側80度だけ記載されていても、本人の健側が何度動くのかが分からなければ、比較ができません。
左右差が重要な後遺障害認定で、「右90度」とだけ書かれていて左側が空欄、という状態は避けたいところです。
【主要運動と参考運動】全部の動きを同じように評価するわけではない
関節には複数の動きがありますが、後遺障害の機能評価ではすべてを同じ重みで扱うわけではありません。厚生労働省の障害等級認定基準では、主要運動(日常動作にとって最も重要な関節運動)と、参考運動(主要運動だけでは判断できない一定の場合に補助的に評価する運動)という考え方が採用されています。代表的な関節では次のように整理されます。
| 関節 | 主要運動 | 参考運動 |
|---|---|---|
| 肩関節 | 屈曲、外転・内転 | 伸展、外旋・内旋 |
| 肘関節 | 屈曲・伸展 | なし |
| 手関節 | 屈曲・伸展 | 橈屈、尺屈 |
| 前腕 | 回内・回外 | なし |
| 股関節 | 屈曲・伸展、外転・内転 | 外旋・内旋 |
| 膝関節 | 屈曲・伸展 | なし |
| 足関節 | 屈曲・伸展 | なし |
厚生労働省の認定基準では、原則として主要運動の制限によって関節機能障害を評価すると明記されています。なお、2022年改訂の関節可動域測定法では、足関節について運動名称を「屈曲・伸展」ではなく背屈・底屈とすることが示されています。
参考運動は「どうでもいい動き」ではない
参考運動は、通常は主要運動ほど優先されません。しかし、主要運動が等級基準をわずかに超えている場合には重要になります。厚生労働省の認定基準では、上肢・下肢の三大関節について、主要運動が「健側の1/2以下」「3/4以下」という基準をわずかに上回っている場合でも、参考運動が基準以下に制限されていれば、著しい機能障害・機能障害として評価する場合があります。
「わずかに」は原則5度ですが、著しい機能障害を判断するときの、肩関節の屈曲・外転、手関節の屈曲・伸展、股関節の屈曲・伸展などについては10度とする扱いも定められています。
例えば、健側肩屈曲170度/患側肩屈曲90度の場合、単純な1/2は85度なので、90度は1/2を5度上回ります。しかし厚生労働省の基準では、肩屈曲について一定範囲内であれば、参考運動である外旋・内旋の制限も含めて評価する具体例が示されています。このため、主要運動だけ測って「10級には届かない」と終了するのは早すぎるケースがあります。
【正しい測定方法】5つの基本ルール
角度計を使用する
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の測定法では、十分な長さの柄を持つ角度計を使用し、通常5度刻みで測定します。目測だけでは正式な可動域測定として十分とはいえません。
「基本軸」と「移動軸」を合わせる
角度計は適当な位置に置くのではありません。動かない側の基準となる基本軸と、関節運動に伴って動く移動軸を決め、その交点付近に角度計を合わせます。基準には、関節ごとに基本軸、移動軸、測定姿勢が定められています。この軸がずれると、測定値にも差が生じます。
代償運動を入れない
特に肩や股関節では重要です。例えば肩を上げるとき、本人は肩関節だけでなく体幹を横に倒したり、背中を反らしたりすることで腕を高く見せることがあります。2022年改訂基準でも、肩関節屈曲では体幹を固定し、脊柱の前後屈が入らないよう注意することが示されています。股関節についても、骨盤や脊柱を十分固定して測定することが定められています。代償動作を含めてしまえば、本来の関節可動域より大きな数値になる可能性があります。
決められた肢位で測る
測定姿勢によって可動域は変わります。例えば股関節屈曲では、2022年基準上、背臥位で膝を曲げた状態で測定します。これはハムストリングスなど多関節筋の影響を減らすためです。足関節の背屈・底屈も、膝を曲げた状態で行うことが示されています。「前回は座位、今回は仰向け」など条件が変われば、数値差が測定条件によるものなのか、症状変化によるものなのか分かりにくくなります。
原則として5度単位で記録する
公式測定法では通常5度刻みです。そのため、87度・93度といった不自然に細かい数字が記載されている場合には、どのような方法で測定したのか確認してもよいでしょう。ただし、研究・特殊な臨床評価などでは目的に応じた別の測定法が用いられることもあり、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会も、より高精度な計測では目的に応じた方法を検討する必要があるとしています。
【部位別】測定するときに特に間違いやすいポイント
肩関節:体を傾けていないか
肩屈曲・外転では、腕だけではなく体幹まで動いてしまいやすいのが特徴です。肩屈曲では体幹を固定し、肩外転では体幹側屈が起きないよう測定します。「腕は肩の高さまでしか上がらないのに、診断書では150度」というような大きな違和感があれば、測定時に体幹運動が混ざっていなかったか確認する価値があります。
肘関節:屈曲だけでなく伸展も確認する
肘の主要運動は屈曲・伸展です。例えば、屈曲120度・伸展-30度のように「最後まで伸びない」障害が残ることがあります。厚生労働省の認定基準では、屈曲と伸展のように同一面上の運動は原則として両者を合わせた可動域で評価します。屈曲だけ見ていては、実際の運動範囲を正確に把握できません。
手関節:屈曲・伸展と橈屈・尺屈を混同しない
手関節の主要運動は屈曲・伸展、参考運動は橈屈・尺屈です。2022年の測定基準では、手関節屈曲・伸展は前腕を中間位として測定し、橈屈・尺屈については前腕を回内位として測定することが示されています。同じ「手首を動かす」検査でも条件が違います。
股関節:骨盤が一緒に動いていないか
股関節屈曲では、骨盤が後ろに傾けば脚が大きく上がったように見えます。基準上は骨盤と脊柱を固定し、屈曲は背臥位・膝屈曲位で行います。骨盤運動が大きく混ざれば、患側可動域を過大評価する可能性があります。
膝関節:股関節の位置にも注意
膝屈曲は股関節を屈曲位にして測定することが2022年基準で示されています。脛骨高原骨折や膝蓋骨骨折後では「曲がらない」だけでなく「伸び切らない」症状もあるため、屈曲・伸展双方の確認が重要です。
足関節:背屈と底屈を測る
2022年改訂では足関節の矢状面の運動について「背屈」「底屈」という名称を使用します。参考可動域は背屈0〜20度、底屈0〜45度とされています。なお、これは「この正常値の半分なら自動的に等級認定」という意味ではありません。原則として本人の健側との比較が重要です。
【測定ミス・記載不足を疑う7つのチェックポイント】
後遺障害診断書を受け取ったら、次の点を確認してください。
- 患側だけでなく健側も測定されているか
- 主要運動がすべて測定されているか
- 必要な場合に参考運動も記載されているか
- 自動運動・他動運動のどちらか不明になっていないか
- 角度が診療中のリハビリ記録と極端に違っていないか
- 左右や屈曲・伸展などの記載欄を取り違えていないか
- 実際の動きと診断書の数字に明らかな違和感がないか
一つ当てはまっただけで「医師のミス」と決めつけるべきではありません。診察時期、疼痛、測定姿勢、治療経過によって可動域は変化します。重要なのは、診断書を提出してから争うのではなく、提出前に疑問点を確認することです。
医師に「数字が違います」といきなり修正を求めてはいけない
患者側からすると、「実際には90度しか上がらないのに120度と書かれている」となれば焦るのは当然です。しかし、「先生の測り方が間違っています」「10級になるように直してください」という伝え方は避けるべきです。
医師に依頼するのは等級の変更ではなく、医学的事実の再確認です。後遺障害等級を決めるのは主治医ではありません。したがって、「10級になる数字にしてください」ではなく、
「後遺障害申請のため、基準に沿った条件で左右の可動域をもう一度確認していただけないでしょうか」という依頼が適切です。
【修正依頼の手順】診断書の可動域がおかしいと感じたら
まず元の測定値を確認する
後遺障害診断書だけで判断せず、診療録、リハビリ記録、理学療法士のROM測定記録、過去の診断書などに記録された可動域も確認します。測定のたびにほぼ同じ数値なのか、一回だけ異常値なのかを整理します。
自動・他動、測定姿勢を確認する
例えば、「理学療法では他動90度だったのに、診断書には自動120度」という状況では、単純な転記ミスだけでは説明がつきません。測定条件が異なっていないか確認します。
主要運動・参考運動の不足を確認する
肩関節や股関節は主要運動が複数あります。肩なら屈曲だけでなく外転・内転、股関節なら屈曲・伸展だけでなく外転・内転も主要運動です。必要な運動が空欄になっていないか確認します。
医師に「再測定」をお願いする
いきなり訂正を求めるより、同じ基準で再測定してもらうことを優先します。再測定した結果が元の診断書と同じであれば、その数値が医学的測定結果として妥当だった可能性があります。一方、再測定によって明らかな転記ミスや左右取り違えが判明した場合には、訂正をお願いする理由が明確になります。
訂正が必要なら正式な方法で修正してもらう
後遺障害診断書は証拠資料です。患者自身が数字を書き換えたり、修正液で変更したりしてはいけません。誤記が判明した場合には、医療機関側に正式に訂正してもらう必要があります。
【DL資料】医師への「可動域測定依頼状」テンプレート
医師に等級を要求する文書ではなく、正確な測定をお願いするための依頼文にします。
医師への可動域測定依頼状
○○先生
いつも治療いただきありがとうございます。交通事故による後遺障害申請を予定しており、関節可動域について確認が必要となりました。お忙しいところ恐縮ですが、後遺障害診断書作成に際し、可能であれば下記についてご確認・測定いただけますでしょうか。
対象部位:関節
患側:右・左
【確認をお願いしたい項目】
- 患側および健側の関節可動域
- 主要運動:
- 参考運動:
- 原則として他動運動による測定値
- 自動運動を用いる場合には、その旨の記載
- 測定時に通常と異なる肢位を使用した場合には、その肢位の記載
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定法」を踏まえてご確認いただけますと幸いです。なお、特定の後遺障害等級に該当する数値への変更をお願いする趣旨ではなく、現在の医学的状態を正確に確認いただくことを目的としております。何卒よろしくお願いいたします。
※実際には、弁護士が受任している場合には、症状・骨折部位・必要な測定項目に合わせて個別の依頼状を作成する方が安全です。
【図解】セルフ可動域チェック――自分の状態を簡易確認する方法
自宅での測定は、正式な後遺障害認定用の測定にはなりません。しかし、「診断書の数値と体感が明らかに違う」「再測定を相談するべきか」を判断する簡易チェックとしては利用できます。
STEP1 まず健康な側を確認する(例:右肩が患側の場合)
左肩(健側):170度
STEP2 患側を同じ動きで確認する
右肩(患側):100度
STEP3 健側に対する割合を計算する
100 ÷ 170 = 約59%
STEP4 目安と比較する
健側の1/2以下 → 著しい可動域制限を検討する領域
健側の3/4以下 → 可動域制限を検討する領域
健側の3/4超 → 可動域だけでは12級相当の基準に達しない可能性
厚生労働省の関節機能障害の基準では、主要運動が健側の1/2以下、3/4以下という区分が評価上重要になります。ただし、このセルフチェックだけで後遺障害等級を判断してはいけません。正式な測定では、角度計・基本軸・移動軸・測定肢位・他動/自動・代償運動・主要運動/参考運動などを確認する必要があるためです。
【やってはいけないセルフ測定】スマートフォンだけで等級を決める
最近ではスマートフォンの角度測定アプリもあります。簡易チェックには便利ですが、それだけで「私は健側の48%だから10級です」と判断するのは危険です。日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の測定法は、単なる角度だけでなく基本軸・移動軸・測定肢位まで定めています。
セルフ測定は、診断するためではなく、医師に相談する必要性を発見するためと考えてください。
「医師の測定値」と「理学療法士の測定値」が違う場合はどうする?
例えば、理学療法士:肩屈曲90度/医師:肩屈曲120度となることがあります。この場合も、どちらかが直ちに「間違い」とは限りません。測定日、疼痛の程度、自動・他動、姿勢、代償運動、治療直後かどうかなどの条件が違えば、測定結果が変化する可能性があります。
したがって、「どちらが正しいですか」ではなく、「後遺障害診断書では、どの条件で測定された値を採用したのか」を確認することが重要です。
症状固定当日に初めて可動域を測るのは避けたい
理想的には、症状固定日だけでなく、それ以前から可動域の推移を確認しておきます。例えば、3か月前:110度/2か月前:100度/1か月前:95度/症状固定時:95度という経過なら、「改善した結果95度で固定した」という流れを確認できます。一方、リハビリ記録:140度/症状固定日:80度となっていれば、なぜ急に60度も違うのか確認する必要があります。
厚生労働省の認定基準でも、関節機能障害については、原因を無視して機械的に角度だけ測定しても障害評価の資料にはならず、器質的変化・神経麻痺・疼痛など原因を明らかにする必要があるとされています。「角度」だけではなく「なぜその角度になったのか」が重要なのです。
「測定ミス」が見つかったら等級は変わるのか
可能性はありますが、測定値を直せば自動的に等級が上がるわけではありません。国土交通省の自賠責後遺障害等級表では、上肢・下肢の関節について「用を廃したもの」「著しい機能障害」「機能障害」などがそれぞれ等級として規定されています。しかし実際の評価では、骨折部位、画像所見、関節内損傷、骨癒合状態、拘縮、神経障害、治療経過、可動域測定などを総合して、事故による関節機能障害なのかを検討する必要があります。
したがって、「診断書を100度から80度に直せば10級になる」というような発想は適切ではありません。正しくは、「本当の可動域が何度なのかを正しい方法で確認し、その可動域制限を説明できる医学的根拠とセットで申請する」ことが重要です。
適切な認定を受けるための3つの戦略
症状固定前から左右の可動域を記録する
定期的に患側・健側の可動域を確認します。
メリット症状固定時の数値だけでなく、治療中から続く障害であることを確認しやすくなります。
デメリット治療途中では数値が変動するため、途中の測定値だけで最終等級を予測することはできません。
診断書作成時に主要運動・参考運動を確認する
肩、手首、股関節などでは、必要な運動方向が複数あります。
メリット重要な測定項目の記載漏れを防げます。
デメリット患者本人が医学的評価方法を完全に理解するのは難しいため、専門家による確認が必要になることがあります。
申請前に診断書と画像・リハビリ記録を照合する
可動域だけを単独で見るのではなく、骨折の画像や治療経過と一致しているか確認します。
メリット単純な転記ミスや左右取り違え、測定項目の不足を申請前に発見できます。
デメリット医療記録を読み解くには専門的な知識が必要で、必要に応じて医師・弁護士との連携が必要になります。
まとめ:可動域は「数字」より先に「測り方」を確認する
この記事のポイントを整理します。
- ①関節可動域は、骨折後の関節機能障害を評価する重要な資料であり、測定方法や記載内容が後遺障害認定の判断に影響する可能性があります。
- ②日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会は、基本肢位、基本軸、移動軸、測定姿勢、他動・自動などを定めた共通の測定方法を公表しています。
- ③原則として他動運動による測定値を用い、自動運動を使用する場合にはその旨を明記します。ただし神経麻痺や強い疼痛などでは自動運動が重要になる場合があります。
- ④関節機能障害では主要運動が原則として評価対象となり、一定の場合には参考運動も等級判断に影響します。
- ⑤患側だけでなく健側との比較、測定姿勢、代償動作の有無、診療・リハビリ記録との整合性まで確認することが重要です。
- ⑥診断書の数値に疑問があっても「等級に合わせて修正してください」と依頼するのではなく、医学的事実を正確に確認するための再測定をお願いするべきです。
後遺障害診断書の可動域欄に数字が入っていると、それだけで「正しく測定されている」と思ってしまいがちです。しかし本当に確認すべきなのは、どの運動を、どの姿勢で、どの軸を使い、自動・他動のどちらで測定した数字なのかです。特に健側の1/2、3/4付近にあるケースでは、数度の差が評価上重要になることがあります。一度後遺障害申請を行ってから不足資料を集め直すよりも、症状固定・後遺障害診断書作成の段階で測定方法と記載内容を確認することが重要です。
※セルフチェックは正式な可動域測定・後遺障害等級判定を行うものではありません。
※本記事は一般的な交通事故・後遺障害制度および関節可動域測定について解説するものであり、法的・医学的アドバイスを目的とするものではありません。可動域測定値や後遺障害等級は、骨折部位、画像所見、治療経過、既往症、疼痛、神経障害、測定方法などによって個別に判断されます。診断書の訂正・再測定については、担当医との十分なコミュニケーションのうえ、必要に応じて交通事故に詳しい弁護士等へご相談ください。
