監修 石田 大輔 (いしだ だいすけ)

名城法律事務所サテライトオフィス 代表

所属 / 愛知県弁護士会 (登録番号42317)

保有資格 / 弁護士

目次

一度作成された後遺障害診断書でも、医学的事実と異なる誤記や記載漏れがあれば、医師へ確認・修正をお願いできる場合があります

交通事故の治療が症状固定となり、主治医から後遺障害診断書を受け取ったものの、次の項目が挙げられます。

  • 「右足をけがしたのに左足と書かれている」
  • 「手術したことが書かれていない」
  • 「MRIで異常が確認されているのに画像所見欄が空欄」
  • 「肩の可動域を測ったのに診断書に記載されていない」
  • 「事故後ずっと訴えていたしびれが自覚症状欄から抜けている」

といったことがあります。さらに難しいのが、次の項目が挙げられます。

  • 「医師が書いた可動域の角度が、リハビリ記録と大きく違う」
  • 「症状固定日が思っていた日と違う」
  • 「今後改善する見込みについて記載がない」
  • 「自分では仕事に大きな支障があるのに、診断書を見ると軽い障害のように見える」

というケースです。このとき、「先生、この診断書だと12級が取れないので書き直してください」と伝えるのは適切ではありません。後遺障害診断書は、弁護士や患者が希望する等級に合わせて作る書類ではないからです。

日本損害保険協会も、後遺障害等級認定では後遺障害診断書が重要な書類であり、医療機関がそれまでの診断内容や検査結果をもとに作成すると説明しています。つまり、修正・加筆をお願いする場合に重要なのは、「等級に有利かどうか」ではなく、「診療録、画像、検査結果、実際に行った測定と診断書の記載が一致しているか」です。厚生労働省も診療情報に関する指針で、医療従事者は診療記録を正確かつ最新に保つよう努め、訂正を行う場合には訂正者、内容、日時等が分かるようにし、不当な改ざんをしてはならないと定めています。

後遺障害診断書そのものについても、基本的な考え方は同じです。医学的な根拠のない内容へ変更してもらうのではなく、客観的な医学的事実を確認し、その事実が診断書へ正しく反映されているかを医師に再確認してもらうことが重要です。この記事では、一度作成された後遺障害診断書について、どのような場合に修正・加筆を依頼できるのか、医師へどう伝えればよいのか、弁護士がどのように医療記録を確認して再考を求めるのか、医師が修正に応じない場合にはどうするのかまで実務的に解説します。

【最初に確認】
「誤記」「記載漏れ」「医学的評価への不満」は別の問題です

後遺障害診断書について、「内容がおかしい」と思った場合、まず問題を3つに分けます。

種類 具体例 対応
明らかな誤記 左右の間違い、数字の転記ミス、事故日の誤り 医師へ訂正を依頼
医学的事実の記載漏れ 手術、画像所見、可動域、症状が抜けている 資料を示して加筆・確認を依頼
医学的評価への意見の違い 症状固定時期、原因、予後について考えが違う 根拠を確認し、必要なら再評価を依頼

この3つを混同すると、医師とのコミュニケーションがうまくいかなくなります。例えば、「右膝屈曲80度と測ったのに180度と書いてある」のであれば、明らかな確認対象です。一方、「私はまだリハビリで改善すると思うのに、医師は症状固定と判断した」という問題は単純な誤記ではありません。

これは医学的判断の問題です。さらに、「14級ではなく12級を取りたいのでMRIの異常を強く書いてほしい」という依頼は、そもそも修正依頼の考え方が違います。重要なのは、何が客観的な誤り・不足で、何が医師の医学的判断なのかを切り分けることです。

後遺障害診断書はなぜそれほど重要なのか

後遺障害等級の申請では、後遺障害診断書だけを見るわけではありません。

  • 画像
  • 診療記録
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 各種検査結果

など複数の資料をもとに審査されます。しかし、後遺障害診断書はその中でも重要です。日本損害保険協会も、後遺障害認定の申請には後遺障害診断書が必要であり、医療機関がこれまでの診断内容や検査結果をもとに作成すると説明しています。

国土交通省が案内する自賠責の請求手続でも、後遺障害請求では医師の診断書を提出する仕組みになっています。つまり診断書は、治療期間中に起きた医学的な出来事を、症状固定時点でまとめる重要な資料です。そのため、次の項目が挙げられます。

  • 傷病名
  • 自覚症状
  • 他覚症状
  • 画像所見
  • 検査結果
  • 可動域
  • 手術内容
  • 今後の見通し

などに事実と異なる記載がある場合には、申請前に確認する意味があります。

【修正できる可能性が高い①】
左右・日付・数字などの明らかな誤記

比較的医師へ確認しやすいのが、単純な誤記です。例えば、次の項目が挙げられます。

  • 右肩骨折なのに「左肩」と記載
  • 事故日が違う
  • 症状固定日の日付が転記ミス
  • 可動域70度を170度と記載
  • 手術日が違う

というケースです。このような場合には、「間違っています」と責めるのではなく、「こちらは右肩の記載でよろしいでしょうか」と確認する形で十分です。診療録や画像、手術記録と照らせば確認できます。

医療現場でも文書作成には転記ミスが起こる可能性があります。重要なのは、誰が悪いかではなく、提出前に正しい医学情報へ修正してもらうことです。

【修正できる可能性が高い②】
診療録にある症状が診断書から抜けている

例えば事故後から、次の項目が挙げられます。

  • 右手指のしびれ
  • 肩の疼痛
  • 膝の不安定感
  • 足関節の痛み

を継続的に訴えており、診療録にも何度も記載されているとします。ところが後遺障害診断書の自覚症状欄には、「右膝痛」しか書かれていない。この場合、「しびれも書いてください」と結論だけを求めるのではなく、「診療録では事故後から右手指のしびれを継続して訴えているようですが、後遺障害診断書にも現在残存している症状としてご記載いただくことは可能でしょうか」と確認します。

ポイントは、診療録という医学的根拠を示すことです。患者本人の記憶だけでなく、これまでの診療経過に裏付けられている方が、医師も確認しやすくなります。

【修正できる可能性が高い③】
手術内容・画像所見が抜けている

骨折案件では、次の項目が挙げられます。

  • ORIF
  • プレート固定
  • スクリュー固定
  • 人工骨頭置換
  • 人工関節置換

などの手術を受けていることがあります。さらに症状固定時のX線、CT、MRIで、次の項目が挙げられます。

  • 変形治癒
  • 関節面の不整
  • 骨頭壊死
  • 骨癒合不全
  • 神経圧迫

などが確認されることがあります。ところが診断書を見ると、「骨折後」だけで、重要な客観的所見がほとんど記載されていないことがあります。この場合にも、「もっと重く書いてください」ではありません。

画像や手術記録を確認したうえで、「このCTで確認されている関節面の変形について、他覚的所見欄へ記載いただくことは可能でしょうか」と質問します。後遺障害認定では、主観的症状だけでなく、画像・検査等の客観的資料も重要です。日本損害保険協会も、申請資料の例として後遺障害診断書だけでなくXP、CT等の画像を挙げています。

【重要】可動域の記載ミスは必ず確認する

骨折後の関節機能障害では、可動域が後遺障害等級に直接影響する場合があります。そのため、次の項目が挙げられます。

  • 左右
  • 健側・患側
  • 測定方向
  • 自動・他動
  • 角度

を確認します。例えば、診察時に、右膝90度左膝140度だったのに、後遺障害診断書で、右140度左90度となっていれば、明らかに確認が必要です。また、リハビリ記録では直近数回とも右膝屈曲90度前後なのに、後遺障害診断書だけ140度となっている場合も、その理由を確認します。

ただし、過去のリハビリ記録と症状固定日の測定値が違う=診断書が間違いとは限りません。症状が改善した可能性もあります。測定方法や肢位が違った可能性もあります。

だからこそ、「数字が違うので訂正してください」ではなく、「リハビリ記録では90度前後でしたが、今回140度となっています。測定方法や状態の違いによるものでしょうか」と確認します。

自動可動域・他動可動域の混同にも注意

関節可動域には、自動可動域と他動可動域があります。後遺障害の関節機能評価では、原則として他動可動域が重要になります。厚生労働省の認定基準でも、原則として他動運動による測定値を用い、末梢神経損傷による麻痺など、他動値を採用することが適切でない場合には自動値を参考とする考え方が示されています。

そのため診断書に、「屈曲80度」だけ書かれている場合、自動なのか他動なのか分からないということがあります。特に神経麻痺があるケースでは、この違いが重要です。診断書作成後でも、「こちらの可動域は他動値でしょうか」と確認し、必要であれば記載方法について医師へ相談します。

【修正ではなく再評価】可動域をそもそも正しく測っていない場合

単純な書き間違いと、測定そのものに問題があるケースは分けます。例えば、次の項目が挙げられます。

  • 角度計を使用していない
  • 健側を測っていない
  • 必要な運動方向を測っていない

という場合です。これは、「80度を70度へ訂正してください」という問題ではありません。必要に応じて、再測定をお願いすることになります。

ただし、弁護士や患者が、「正しく測ればこの数字になるはずだ」と決めることはできません。再測定の結果が以前と同じ場合もあります。目的は、正しい測定方法で再確認することです。

【修正できない場合がある①】
医師の医学的評価そのもの

例えば医師が、「症状固定」と判断したとします。患者本人は、「まだ良くなると思う」と感じています。この場合、「症状固定日を3か月後へ変更してください」と簡単に依頼できる問題ではありません。

症状固定は医学的な判断を含むためです。まず、「現在も治療による改善は期待できますか」「なぜこの時点で症状固定と判断されたのでしょうか」と確認します。医師の説明を聞き、新しい画像や治療経過等を踏まえて再評価すべき医学的根拠があるなら、その資料をもとに再考をお願いすることは考えられます。

しかし、慰謝料を増やしたいから症状固定日を延ばしてほしいという依頼は適切ではありません。

【修正できない場合がある②】
診療録に存在しない症状を後から追加したい

症状固定後になって、「実は事故直後からずっと足がしびれていました」と申し出ることがあります。しかし、それまでの診療録には一度もしびれの記載がない。この場合、「事故直後からしびれていたと診断書に書いてください」と頼んでも、医師が医学的根拠を確認できないことがあります。

もちろん、患者本人が本当に症状を伝えていたのに医療記録へ十分反映されなかった可能性もあります。その場合には、次の項目が挙げられます。

  • 問診票
  • 紹介状
  • リハビリ記録
  • 他院の診療録

などに記録がないか確認します。ただし、後遺障害認定のために過去の症状を新しく作ることはできません。

【修正できない場合がある③】
医学的根拠なく等級に合わせて数字を変える

例えば、健側120度患側65度だった場合、「60度なら2分の1なので10級になる。5度だけ直してほしい」と考える人がいるかもしれません。これはしてはいけません。後遺障害等級に合わせて測定値を変更することは、医学的な修正ではありません。

厚生労働省は診療記録の訂正についても、訂正内容等が分かる形で行い、不当に内容を変更する改ざんをしてはならないとしています。後遺障害診断書でも、数字を等級へ合わせるのではなく、実際の測定結果から等級を判断するという順番を崩してはいけません。

【実務】まず医師へ依頼する前に診療録・検査結果を確認する

後遺障害診断書について疑問がある場合、いきなり主治医へ修正をお願いするより、まず根拠を確認する方が合理的です。厚生労働省の診療情報提供指針では、患者等に対する診療情報の提供方法として、口頭説明、説明文書の交付、診療記録の開示等を挙げています。必要に応じて、次の項目が挙げられます。

  • 診療録
  • 画像
  • 画像診断報告書
  • リハビリ記録
  • 手術記録
  • 検査結果

を確認します。例えば診断書に、「MRI異常なし」と書かれていた場合。画像診断報告書にも、「明らかな異常なし」と書かれているなら、単純に「異常ありへ直してください」とは言えません。

一方、報告書に、「○○部位に高信号」と記載されているのに診断書では「異常なし」となっているなら、「こちらの画像診断報告書との関係を確認していただけますか」と質問できます。この違いが重要です。

【医師への依頼術①】
最初から「間違っている」と決めつけない

医師との関係を悪化させやすい言葉があります。

  • 「先生、ここ間違っています」
  • 「弁護士に見せたら書き方がおかしいと言われました」
  • 「この書き方だと等級が取れません」

といった伝え方です。これでは、「医学的な診断へ法律側が介入している」と受け取られても不思議ではありません。まずは、確認するという形にします。

例えば、「一点確認させていただきたいのですが、診療録では右肩の記載になっている一方、後遺障害診断書では左肩になっています。こちらは右肩でよろしいでしょうか」という伝え方です。誰かのミスを追及するのではなく、事実を確認します。

【医師への依頼術②】
「等級」ではなく「医学的事実」を主語にする

悪い例は、「12級が取れないので、ここを追加してください」です。より適切なのは、「事故後から継続して右手指のしびれを訴えており、診療録にも複数回記載があります。現在も残存している症状として、診断書への記載をご検討いただけますでしょうか」です。主語が、12級から、医学的事実へ変わっています。

医師にお願いするのは法律的な結論ではなく、医学的な確認です。

【医師への依頼術③】
一度に何十項目も要求しない

後遺障害診断書を確認すると、「あれも足りない」「これも書いてほしい」と、多数の要望が出ることがあります。しかし、整理せず大量に依頼すると医師にも伝わりにくくなります。まず重要度を分けます。

優先度A

  • 明らかな誤記
  • 左右
  • 可動域
  • 傷病名
  • 手術
  • 画像所見

優先度B

  • 現在残っている症状
  • 医学的原因
  • 検査結果

優先度C

日常生活への影響等の補足というように整理します。等級判断へ直接関係する医学的事項から確認するのが実務的です。

弁護士から医師へ依頼する場合は「質問書」にする

患者本人が医師へ説明するのが難しい場合には、弁護士から書面を作成する方法があります。ただし、「次のとおり修正してください」という命令文にはしません。例えば、確認事項1○月○日の診療録では右膝屈曲90度と記載されていますが、後遺障害診断書では140度となっています。症状固定時の測定値について、再度ご確認いただくことは可能でしょうか。

確認事項2○月○日のCT画像診断報告書では関節面の陥没が記載されています。現在の機能障害との医学的関連について、先生のご所見をお伺いできますでしょうか。確認事項3診療録上、事故後から右足趾のしびれの訴えが継続しています。症状固定時にも残存している場合、後遺障害診断書の自覚症状欄への追記をご検討いただけますでしょうか。

という形です。つまり、弁護士が答えを書くのではなく、医師が医学的回答を出せる質問にすることがポイントです。

「加筆してください」より「ご確認いただけますか」が有効な理由

医師は診断書作成の専門家です。患者や弁護士から、「こう書いてください」と言われれば、医学判断への介入と感じる可能性があります。一方、「この資料と診断書の記載に違いがあるように見えますが、どのように理解すればよいでしょうか」と確認すれば、医師自身が、単純な誤記なのか医学的理由があるのかを説明できます。

その結果、「これは記載漏れなので追加しましょう」となれば自然な修正です。医師に結論を押し付けるのではなく、判断材料を提示し、再確認してもらうのが基本です。

【具体例】可動域が診断書だけ大きくなっている

例えば、次の項目が挙げられます。

  • 3月 90度
  • 4月 95度
  • 5月 95度
  • 症状固定時の診断書 140度

だったとします。まず、「140度を95度に直してください」とは言いません。考えられるのは、次の項目が挙げられます。

  • 測定方法が違った
  • 他動と自動が違った
  • 別の運動方向を記載した
  • 左右を取り違えた
  • 実際に大幅改善した
  • 単純な転記ミス

などです。そこで、過去のリハビリ記録症状固定日の診療録を確認します。そして、「これまで90~95度程度でしたが、診断書では140度となっています。当日の測定結果について再確認していただけますでしょうか」と依頼します。

医師が、「当日は実際に140度まで改善していました」と説明すれば、その医学的評価を尊重する必要があります。

【具体例】MRI所見が抜けている

MRI画像診断報告書に、「右肩腱板に○○所見」と記載されていたとします。一方、後遺障害診断書の他覚的所見欄は空欄。この場合には、「MRIで異常がありますので追記してください」ではなく、「○月○日のMRI画像診断報告書に○○との記載がありますが、現在の症状との関連について先生はどのように評価されていますでしょうか。後遺障害診断書へ記載すべき所見であれば、ご検討いただけますでしょうか」という依頼にします。

MRI所見があっても、それが現在の症状の原因とは限りません。最終的な医学的評価は医師が行います。

【具体例】自覚症状が一部しか書かれていない

例えば現在、次の項目が挙げられます。

  • 首痛
  • 右上肢のしびれ
  • 握力低下

があるとします。後遺障害診断書には、「首痛」のみ。診療録を調べると、事故後から右上肢しびれが繰り返し記載されている。

この場合には、「しびれを追加してください」より、「診療録上、右上肢のしびれが事故後から継続しているようですが、症状固定時にも残存している症状であれば診断書へご記載いただくことは可能でしょうか」とします。一方、握力低下について診療録や検査に何も記録がないのであれば、同じ扱いにはできません。

【具体例】手術の記載がない

手術を受けているのに後遺障害診断書に記載がない場合には、比較的確認しやすい問題です。例えば、大腿骨頸部骨折人工骨頭置換術を受けているのに、傷病名だけしか記載されていない。人工骨頭・人工関節は後遺障害評価で重要な意味を持つため、手術記録との整合性を確認します。

「○月○日に人工骨頭置換術を受けていますが、診断書にも手術内容をご記載いただくことは可能でしょうか」と確認します。

【重要】症状固定日は「保険会社に言われた日」ではない

後遺障害診断書には症状固定日が記載されます。しかし、保険会社から、「6月末で治療費を終了します」と言われたからといって、自動的に6月30日が症状固定日になるわけではありません。症状固定は医学的な判断が重要です。

したがって、診断書に記載された症状固定日について疑問がある場合、「保険会社が5月末と言っていたので5月31日に変更してください」という話ではありません。医師に、「先生として、どの時点で一般的な治療を続けても大きな改善が期待できない状態になったと判断されていますでしょうか」と確認します。

診断書修正時は「元の記載が分からなくなる修正」は避ける

厚生労働省は診療記録について、訂正する場合には、次の項目が挙げられます。

  • 誰が
  • どの内容を
  • いつ

訂正したのか分かるように行う必要があり、不当に元の内容を変える改ざんは禁止しています。後遺障害診断書の訂正方法についてすべて同じ形式が法令で決められているという意味ではありませんが、訂正経過が分かる形にするという考え方は重要です。医療機関によっては、次の項目が挙げられます。

  • 訂正印
  • 新しい診断書の再発行
  • 訂正・補足書の作成

などの方法が取られます。どの方法が適切かは、作成した医療機関へ確認します。患者本人が勝手に診断書へ書き込んだり、数字を書き換えたりしてはいけません。

修正前の診断書も保管しておく

医師から修正版を受け取った場合、元の診断書を捨てる必要はありません。むしろ、次の項目が挙げられます。

  • 初版
  • 修正版
  • 修正理由が分かる書類

を保管しておく方が整理しやすくなります。後になって、「なぜ数字が変わったのか」という問題が出た場合にも経緯を説明できます。特に可動域や症状固定日など重要な部分が変更された場合には、なぜ修正されたのかを説明できることが重要です。

【医師が修正を断った場合①】
まず理由を確認する

医師が、「修正しません」と言った場合、すぐに、「この医師は協力してくれない」と考えるのは早い場合があります。例えば、次の項目が挙げられます。

  • 「診療録にもその症状の記録がない」
  • 「医学的には事故との関係を認められない」
  • 「症状固定時の測定値は間違っていない」

という医学的理由があるかもしれません。まず、「先生としては、どのような医学的理由から現在の記載が適切とお考えでしょうか」と確認します。理由が分かれば、その後の対応も決めやすくなります。

【医師が修正を断った場合②】
別資料で補足できるか検討する

診断書そのものを修正しなくても、次の項目が挙げられます。

  • 画像診断報告書
  • 検査結果
  • 診療録
  • リハビリ記録
  • 医師の回答書
  • 意見書

などによって補足できる場合があります。後遺障害認定では診断書だけが資料ではありません。日本損害保険協会も、申請資料として画像等を含む各種検査結果を挙げています。

したがって、「診断書を修正してくれない=申請できない」ではありません。重要なのは、医学的な事実をどの資料で立証するかです。

セカンドオピニオンを受ければ診断書を書き換えられる?

別の医師へ相談すること自体はできます。しかし、「最初の医師が希望どおり書いてくれないから、書いてくれる医師を探す」という発想はおすすめできません。交通事故後の症状を継続的に診てきたのは主治医です。

新しく受診した医師は、事故直後の状態数か月間の治療経過を直接診ていません。したがって、単に診断書を書いてもらうためだけに転院するのは適切ではない場合があります。一方、次の項目が挙げられます。

  • 専門的な診断が必要
  • 神経損傷の精査が必要
  • 画像について専門医の評価が必要

という医学的理由があれば、紹介を受けて専門医を受診する意味があります。目的を区別します。

すでに後遺障害申請を提出した後に間違いに気付いたら

申請後でも、審査中であれば追加資料を提出できる場合があります。まず申請を行った保険会社や担当窓口へ、「後遺障害診断書に訂正が生じた」ことを連絡し、修正版等を追加提出できるか確認します。すでに認定結果が出ている場合には、次の項目が挙げられます。

  • 修正された診断書
  • 新しい画像
  • 医師の意見

等をもとに異議申立てを検討することがあります。国土交通省も、後遺障害等級認定結果に対して異議申立ての手続があることを案内しています。重要なのは、「結果に納得できないので異議申立て」ではなく、初回申請にはなかった医学的根拠を追加することです。

【弁護士の役割】
診断書を「書く」のではなく、診療記録との矛盾を探す

弁護士が診断書を確認するとき、「この文章をこう書き換えましょう」という仕事をしているわけではありません。まず、次の項目が挙げられます。

  • 事故直後の診断
  • 画像
  • 診療録
  • リハビリ記録
  • 手術記録
  • 検査結果
  • 後遺障害診断書

を比較します。例えば、次の項目が挙げられます。

  • カルテには毎回右手のしびれ
  • 診断書には記載なし
  • CTに変形治癒
  • 診断書には画像所見なし
  • リハビリでは膝90度
  • 診断書では140度

という「ずれ」を探します。そして、なぜずれているのかを確認します。単純な記載漏れなのか。

測定時期が違うのか。医学的評価が変わったのか。ここを整理してから医師へ問い合わせます。

【弁護士から医師へ再考を促す】有効なのは「医学資料+質問」

例えば、弁護士から医師へ、「12級7号になるためには患側が健側の4分の3以下である必要がありますので、この数字へ変更してください」と依頼するのは適切ではありません。それよりも、「○月○日、○月○日、○月○日のリハビリ記録では右膝屈曲がそれぞれ90度、95度、95度とされています。後遺障害診断書では140度となっていますが、症状固定時の測定結果について再度ご確認いただけますでしょうか」とします。

客観資料を並べれば、医師自身が判断できます。この形なら、弁護士が医学的結論を決めるのではなく、医師の医学的判断を再確認してもらうことができます。

【医師への修正依頼】使いやすい伝え方

患者本人から伝える場合には、次のような形が使いやすいです。誤記の場合「先生、後遺障害診断書について一点だけ確認させてください。事故でけがをしたのは右膝ですが、こちらは左膝となっています。右膝への訂正をお願いできますでしょうか。」症状の記載漏れの場合「事故後から右手のしびれについて診察時にもお伝えしており、現在も残っています。診療録でも確認できるようでしたら、後遺障害診断書への記載をご検討いただけますでしょうか。」画像所見の場合「○月のCT報告書に関節面の変形について記載があります。この所見について、現在の症状との関連も含めて後遺障害診断書へ記載すべき内容かご確認いただけますでしょうか。」可動域の場合「これまでのリハビリ記録では90度前後と伺っていましたが、診断書では140度となっています。当日の測定結果について、一度ご確認いただけますでしょうか。」共通するのは、「直してください」より「確認してください」です。

【やってはいけない対応】診断書修正で避けるべき6つのこと

① 「このままだと等級が取れない」と圧力をかける

医師は等級取得のために診断するわけではありません。

② 希望する等級に合わせて数字を指定する

測定結果が先で、等級は後です。

③ 患者本人が診断書へ書き込む

医療文書を自分で修正してはいけません。

④ 診療録にない過去の症状を追加するよう求める

医学的根拠のない記載は避けます。

⑤ 医師の医学的判断に納得できないだけで「間違い」と決めつける

誤記と医学判断を区別します。

⑥ 修正理由を残さない

重要な数値等が変わる場合には、経緯が分かる状態にしておく方が安全です。

【実務チェックリスト】後遺障害診断書を受け取ったら確認する15項目

診断書を受け取ったら、まず基本情報として氏名、生年月日、事故日、症状固定日、入通院期間を確認します。次に、傷病名、手術内容、症状、画像所見、検査結果を確認します。関節障害がある場合には、患側・健側、左右、自動・他動、必要な運動方向、可動域角度を確認します。

さらに、診断書の内容が直近の診療録・リハビリ記録・画像と大きく矛盾していないかを確認します。問題があれば、誤記なのか、記載漏れなのか、医学判断への疑問なのかを分類してから医師へ相談します。

診断書完成後すぐに保険会社へ送らない

後遺障害診断書を受け取ると、「病院が作った書類だから、そのまま送ればよい」と思ってしまうかもしれません。しかし、次の項目が挙げられます。

  • 左右の取り違い
  • 数字の誤記
  • 記載漏れ

などは、人間が文書を作る以上起こり得ます。特に後遺障害申請では、一度提出された診断書が重要な資料になります。したがって、受領後に内容を一度確認してから提出することをおすすめします。

これは医師を疑うという意味ではありません。重要な法律手続に使用する書類として、事実と一致しているかを確認するということです。

弁護士へ相談するタイミング

次のようなケースでは、診断書を保険会社へ提出する前に相談する意味があります。

  • 可動域の数字がおかしい
  • 患側・健側が逆になっている
  • 自動・他動が不明
  • 重要な手術が書かれていない
  • CT・MRI所見が抜けている
  • 継続していた症状が診断書にない
  • 症状固定日に疑問がある
  • 診療録と診断書の内容が大きく違う
  • 医師へどう修正を依頼すればよいか分からない
  • 医師から修正を断られた

特に8級・10級・12級など、可動域によって等級が変わる可能性がある案件では、提出前の確認が重要です。

まとめ:診断書の修正は「有利に書き直す」のではなく「医学的事実へ戻す」作業です

この記事のポイントを整理します。

  1. 01後遺障害診断書は、後遺障害認定で重要な医学資料です。
  2. 02一度作成された診断書でも、左右、数字、日付など明らかな誤記があれば修正をお願いできる場合があります。
  3. 03診療録・画像・手術記録等に存在する医学的事実が抜けている場合には、資料を示して加筆を相談できます。
  4. 04一方、症状固定時期や事故との因果関係など医師の医学的評価は、単なる誤記とは異なります。
  5. 05医師へ修正を依頼する際には、「等級が取れないから」ではなく「この医学的資料と記載内容に違いがあります」と伝えることが重要です。
  6. 06可動域については、過去のリハビリ記録と大きく違う場合でも、直ちに誤りと決めつけず、測定方法や当日の状態を確認します。
  7. 07患者や弁護士が希望する等級に合わせて角度や症状を変更してもらうことは適切ではありません。
  8. 08修正する場合には、元の内容と修正経過が分かる形にしておくことが重要です。
  9. 09医師が修正しない場合でも、画像、診療録、リハビリ記録、回答書等の別資料によって医学的事実を補足できることがあります。
  10. 10すでに後遺障害認定結果が出ている場合には、新たな医学資料をもとに異議申立てを検討できる場合があります。

後遺障害診断書の修正で一番避けたいのは、「この書き方だと等級が取れないから変えてほしい」という発想です。後遺障害等級は、診断書の文章を上手に作れば認定されるものではありません。本当に重要なのは、事故によってどのような傷害を負い、どのような治療を受け、症状固定時に何が残り、それを画像、検査、診察、可動域等によってどのように医学的に確認できるかです。

診断書修正の目的は、医学的事実を後遺障害等級へ合わせることではなく、診断書を医学的事実へ合わせることです。この順番を守れば、医師との不要な対立も避けやすくなります。

後遺障害診断書の内容に疑問がある方へ

医師から後遺障害診断書を受け取り、次の項目が挙げられます。

  • 「左右が違う」
  • 「可動域の数字がおかしい」
  • 「画像所見が書かれていない」
  • 「手術内容が抜けている」
  • 「事故後から続く症状が記載されていない」

と感じた場合には、保険会社へ提出する前に一度内容を確認してください。当サイトでは、案件に応じて、次の項目が挙げられます。

  • 後遺障害診断書の内容確認
  • 診療録との照合
  • 画像・検査結果の確認
  • 可動域測定記録との比較
  • 医師への確認事項の整理
  • 質問書・照会書の作成
  • 修正・加筆後の診断書確認
  • 後遺障害申請資料全体の整理

までを検討します。弁護士が行うのは、「この等級になるよう診断書を書いてください」と医師へ依頼することではありません。診療録や検査結果と診断書の間に食い違いがある場合に、その医学的理由を確認し、必要であれば医師自身に再評価してもらうことです。

一度提出した後遺障害診断書を後から訂正するよりも、提出前に医学的事実との整合性を確認する方が合理的です。特に、可動域障害、人工関節、変形治癒、神経障害など、診断書の具体的な記載が後遺障害評価へ影響する可能性があるケースでは、提出前に交通事故・後遺障害に詳しい弁護士へ確認してもらうことが重要です。

※本記事は一般的な交通事故、後遺障害診断書および後遺障害認定について解説するものであり、個別の法律・医学的アドバイスを目的とするものではありません。診断書の記載内容・修正の可否は、診療録、画像・検査結果、主治医の医学的判断、医療機関の文書管理方法等によって異なります。弁護士や患者が医師に医学的根拠のない記載変更を求めることは適切ではありません。具体的な診断・治療・症状固定については担当医、後遺障害申請・損害賠償については交通事故に詳しい弁護士等へご相談ください。