監修 石田 大輔 (いしだ だいすけ)

名城法律事務所サテライトオフィス 代表

所属 / 愛知県弁護士会 (登録番号42317)

保有資格 / 弁護士

目次

画像鑑定は「等級を取るための診断」ではなく、既存のX線・CT・MRIを専門的に再評価して客観所見を確認するための医証です

交通事故後に痛みやしびれ、関節可動域制限が残っているにもかかわらず、

  • 「画像には異常がありません」
  • 「骨はきれいについています」
  • 「MRIでは後遺障害の原因となる所見はありません」

として、後遺障害が非該当となることがあります。このとき、「本当に画像に何も写っていないのだろうか」と疑問を感じることがあります。例えば、

  • 事故直後のX線では「骨折なし」と診断されたが、その後も手首の痛みが続いている
  • CTを撮影しているが、関節面のわずかな段差について診断書には記載されていない
  • MRIには椎間板や神経周囲の変化があるが、現在の症状との関係が十分説明されていない
  • 粉砕骨折後に痛みと可動域制限が残っているが、「骨癒合良好」の一言で終わっている

といったケースです。このような場合に検討されることがあるのが、画像鑑定です。画像鑑定とは、交通事故時や治療中に撮影したX線、CT、MRIなどの画像データを、放射線診断や対象部位について専門的な知識を持つ医師が改めて確認し、画像上確認できる医学的所見を評価することです。

日本医学放射線学会は、画像診断を単に画像を見る作業ではなく、検査の適応判断、読影、報告書作成、結果の伝達までを含む一連の行為と位置付け、画像診断とその管理は専門知識を有する放射線診断専門医が担うことを原則としています。また、非放射線科医による画像評価と放射線診断専門医による評価は必ずしも完全には一致せず、専門医による確認が重要な場面があると説明しています。ただし、画像鑑定をすれば必ず異常が見つかるわけではありません。

また、画像鑑定で所見が見つかれば必ず後遺障害等級が認定されるわけでもありません。後遺障害認定では、

  • 事故態様
  • 症状
  • 治療経過
  • 診察所見
  • 画像
  • 検査結果
  • 症状固定時の状態

などを総合的に確認します。画像鑑定の役割は、これまで十分評価されていなかった客観的な医学所見が本当に存在するのかを、専門的な視点から再確認することです。そして、その所見が現在残っている症状と医学的に整合する場合には、

  • 後遺障害申請
  • 異議申立て
  • 損害賠償交渉

などで重要な追加医証になる可能性があります。この記事では、交通事故における画像鑑定の意味、X線・CT・MRIの違い、再読影が有効なケース、追加撮影が必要なケース、画像鑑定結果を後遺障害認定へつなげる方法まで詳しく解説します。

【最初に確認】「画像鑑定」「再読影」「撮り直し」は同じではありません

画像に関する対応では、次の3つを区別する必要があります。

対応 内容 新しい撮影
画像鑑定・再読影 すでに撮影済みのX線・CT・MRIを別の医師が再評価する 原則不要
追加撮影 別方向・別条件・別部位などを新たに撮影する 必要
経時的再検査 時間経過後の状態変化を見るため再度撮影する 必要

画像鑑定では、基本的に既存の画像データを利用します。例えば、事故直後に撮影したCTのDICOMデータがあれば、その画像を外部の放射線診断専門医等へ提供し、改めて評価してもらいます。一方、

  • 必要な部位がそもそも撮影されていない
  • 撮影範囲が不足している
  • 画像の解像度や撮像条件では確認できない
  • 事故後の変化を確認する必要がある

という場合には、新しい検査が必要になることがあります。つまり、「画像に異常が見つからなかったから、同じ検査をとりあえずもう一度撮る」という話ではありません。既存画像を再評価すればよいのか。

別の検査方法が必要なのか。時間経過後の画像が必要なのか。を医学的に判断する必要があります。

なぜ同じ画像でも評価が変わることがあるのか

同じCTやMRIなら、誰が見ても同じ結果になるように思えるかもしれません。しかし画像診断では、

  • 撮影目的
  • 対象部位
  • 臨床情報
  • 画像の見方
  • 専門分野

などによって注目するポイントが異なることがあります。日本医学放射線学会も、主治医等による画像評価と放射線診断専門医による評価が細部まで完全に一致するとは限らず、専門外の偶発所見を拾い上げる点でも放射線診断専門医の役割が重要であるとしています。例えば交通事故直後の救急診療では、

  • 生命に関わる損傷がないか
  • 緊急手術が必要か
  • 大きな骨折・脱臼がないか

という確認が優先されることがあります。一方、数か月後の後遺障害評価では、

  • 関節面のわずかな変形
  • 骨癒合後の段差
  • 神経が通る部分の狭窄
  • 微細な骨折

など、別の観点から画像を見ることがあります。これは最初の医師が間違っていたと単純に評価する話ではありません。診療時と後遺障害評価時では、画像を見る目的そのものが異なる場合があるということです。

【一覧】レントゲン・CT・MRIは何が違う?

交通事故では、検査ごとに得意なものが違います。

検査 特に確認しやすいもの 後遺障害での主な用途
X線 骨折、骨癒合、変形、関節配列 骨折経過、変形治癒、関節状態
CT 微細骨折、粉砕、関節面の段差・陥没、複雑な骨形態 関節内骨折、変形、偽関節等
MRI 椎間板、神経周囲、靱帯、半月板、軟骨、骨髄など 骨以外の損傷や神経症状の評価

どの検査が「一番優秀」という関係ではありません。何を確認したいのかによって検査を使い分けます。

レントゲンは骨折評価の基本

交通事故で骨折が疑われる場合、まずX線撮影が行われることが多くあります。日本整形外科学会も、骨折の診断では症状を確認したうえでX線写真を撮影することを基本としています。X線では、

  • 骨折
  • 骨のずれ
  • 骨癒合
  • 骨の変形
  • 人工関節
  • プレート・スクリュー

などを確認できます。後遺障害評価でも、

  • 骨がどのようについたのか
  • 変形が残っているか
  • 関節の配列はどうか

を時系列で確認するために重要です。一方で、すべての骨折がX線で明瞭に確認できるわけではありません。

X線で見つかりにくい骨折は実際にある

日本整形外科学会は、転位のない骨折やX線に写りにくい骨折について、通常のX線写真だけでは診断が難しいことがあり、その場合にはCTが役立つと説明しています。代表的な例が舟状骨骨折です。舟状骨骨折は交通事故などで手をついた際にも生じますが、日本整形外科学会は、初期には通常のX線写真で発見されにくいことがあり、疑わしい場合にはCTやMRIによって骨折部を明瞭に確認できるとしています。

したがって、事故直後のX線が正常=骨折が絶対に存在しないとは限りません。症状と画像が一致しない場合には、医学的に必要であればCT・MRI等を検討します。

CTは「骨の形」を詳しく見るのに強い

CTは、骨折の形態を立体的かつ詳細に確認するのに有用です。例えば、

  • 粉砕骨折
  • 関節内骨折
  • 骨片
  • 関節面の段差
  • 陥没
  • 骨癒合後の変形
  • 偽関節

などです。日本整形外科学会も、骨盤は形状が複雑であるため、X線だけでなくCTによって骨折位置を詳細に確認することが治療方針決定に必要としています。特に後遺障害で重要なのが、関節面がどう治ったのかです。

例えば脛骨高原骨折や寛骨臼骨折では、骨折自体は癒合しているとしても、関節面に段差や変形が残っている場合があります。日本整形外科学会も寛骨臼骨折について、関節内骨折であるため適切な整復が重要であり、ずれや段差を残した場合には将来的な変形性関節症につながる可能性があると説明しています。このようなケースでは、「骨癒合良好」という診断だけでは後遺障害の原因を十分説明できないことがあります。

CT画像を詳細に見る意味が出てきます。

MRIは「骨以外」も含めて確認する

MRIはX線・CTとは性質が異なります。

  • 椎間板
  • 神経周囲
  • 靱帯
  • 半月板
  • 軟骨
  • 筋肉
  • 骨髄

など、軟部組織を含む評価に用いられます。例えば交通事故後に、

  • 首から腕への痛み
  • 手指のしびれ
  • 筋力低下

が続いている場合には、神経根周辺の状態が問題になることがあります。日本整形外科学会も、頚椎症性神経根症について、神経根への圧迫・刺激が症状の原因となり、MRI等によって神経根周囲の状態を評価すると説明しています。一方で、MRIでも神経根圧迫が明瞭に確認できない場合があることも示しています。つまり、MRIを撮れば神経症状の原因が必ず映るわけではありません。

画像はあくまで診察所見や症状と合わせて評価します。

【重要】MRIに異常があれば「事故による後遺障害」とは限らない

交通事故の画像鑑定で非常に重要な注意点です。MRIには、

  • 椎間板膨隆
  • 骨棘
  • 脊柱管狭窄
  • 変性

などが写る場合があります。しかし、これらがすべて今回の交通事故によって発生したとは限りません。日本整形外科学会も外傷性頚部症候群について、X線やMRIでは年齢に応じた変性所見がみられることがあり、それらと外傷との関係を慎重に判断する必要があると説明しています。

したがって画像鑑定で、「椎間板突出あり」と書かれたからといって、事故によって椎間板ヘルニアが発生した後遺障害12級が認定されるとは自動的には言えません。重要なのは、

  • 事故前画像
  • 事故後画像
  • 症状が出た時期
  • 症状の部位
  • 神経学的所見

などとの整合性です。

【画像鑑定が有効になりやすい①】症状が強いのに「画像異常なし」とされている

例えば、

  • 手首の特定部位に強い痛みが続く
  • 荷物を持つと激痛が出る
  • 可動域制限が残る

にもかかわらず、事故直後のX線では「異常なし」とされているケースです。この場合、初期X線で写りにくい骨折関節内の微細な損傷などがなかったかを検討します。ただし、症状があるから必ず画像異常があるということではありません。

画像上の異常がなくても症状が残る傷病はあります。画像鑑定の目的は、「異常を探し出す」ことではなく、「画像上本当に異常がないのかを再評価する」ことです。

【画像鑑定が有効になりやすい②】粉砕骨折・関節内骨折

粉砕骨折や関節内骨折では、骨折線だけでなく、

  • 関節面の段差
  • 陥没
  • 骨片
  • 変形
  • 骨癒合

を詳細に確認する必要があります。こうしたケースではCTが重要になります。特に、

  • 骨はついている
  • しかし痛い
  • 関節が動かない

という場合には、「癒合したか」だけでなく、「どのような形で癒合したか」を見る必要があります。画像鑑定で、関節面に不整が残っている変形治癒があるなどが確認できれば、現在の可動域制限や疼痛の医学的説明を補強できる可能性があります。

【画像鑑定が有効になりやすい③】過去画像と現在画像を比較したい

後遺障害では、最新のMRI一枚だけを見るより、

  • 事故直後
  • 治療途中
  • 症状固定時

という時系列で確認することが重要な場合があります。例えば、

  • 事故直後には骨折線があった
  • その後骨癒合した
  • しかし関節面に変形が残った

という経過です。画像を時系列で並べることによって、

  • 事故による損傷
  • 治療経過
  • 現在残っている障害

の関係を説明しやすくなることがあります。

【画像鑑定が有効になりやすい④】主治医の専門領域とは違う部分を詳しく確認したい

例えば整形外科で治療を受けていても、画像診断そのものを専門とする放射線診断専門医とは役割が異なります。日本医学放射線学会は、画像診断について専門知識を持つ放射線診断専門医による読影を原則と位置付けています。これは、整形外科医が画像を読めないという意味ではありません。

整形外科医は、患者を診察し、症状・身体所見・画像を総合して治療します。一方、放射線診断専門医は画像診断そのものを専門とします。役割が違うため、別の専門的視点から既存画像を確認する意味があるケースが存在するということです。

【画像鑑定が有効になりやすい⑤】非該当・低い等級の理由が「客観所見不足」

後遺障害認定結果を見ると、「画像上、本件事故による明らかな異常所見は認め難い」など、客観的所見の不足が理由の一つとなっている場合があります。この場合、同じ主張をもう一度提出するだけでは結果が変わりにくいでしょう。まず、

  • 本当に画像に所見がないのか
  • 確認すべき画像がすべて提出されているか
  • 別の検査が必要だったのか

を確認します。もし外部専門医による再読影で、これまで十分評価されていなかった所見が確認されれば、

  • その意見書
  • 画像
  • 診療記録
  • 症状との対応関係

を新たな資料として異議申立てへ提出することを検討できます。国土交通省も、後遺障害等級認定に不服がある場合には、新たな立証資料を添付して異議申立てを行うことができると案内しています。

【重要】画像鑑定だけで非該当から12級になるわけではない

画像鑑定について、「非該当を12級へ変える方法」のように考えるのは適切ではありません。例えばMRI再読影で、軽度の椎間板膨隆が確認されたとします。しかし、

  • 事故前から存在していた可能性が高い
  • 症状の部位と一致しない
  • 神経学的異常がない
  • 事故後の治療経過と合わない

のであれば、後遺障害の客観的根拠として十分とは限りません。反対に、

  • 事故直後のCTに明確な骨折が存在
  • その後その部位に変形が残る
  • 現在の可動域制限と医学的に一致

という場合には、より重要な意味を持つ可能性があります。つまり後遺障害で必要なのは、画像所見の存在だけではなく、事故・症状・所見が一本の線でつながることです。

画像鑑定前に「認定理由」を確認する

非該当や想定より低い等級だったからといって、すぐ画像鑑定へ進む必要はありません。まず認定理由を確認します。国土交通省は、自賠責保険会社等に対し、後遺障害等級や非該当について判断理由を書面で説明する仕組みを案内しています。

例えば非該当理由が、

  • 治療経過が短い
  • 症状が一貫していない
  • 神経学的所見がない
  • 事故態様との整合性が乏しい

なのであれば、画像鑑定だけでは解決しない可能性があります。一方、画像上の客観的所見が乏しいという理由が中心であれば、既存画像を改めて確認する意味が大きくなります。

【再読影と撮り直し】まず既存画像を確認する方が合理的な場合がある

交通事故案件で、「もう一度MRIを撮った方がよいですか」と聞かれることがあります。しかし、まず既存画像の内容を確認します。すでに十分な範囲・条件で撮影されているなら、新たに検査するのではなく、既存データを専門医が再読影するという方法があります。

特にCTでは放射線被ばくがあります。日本医学放射線学会も、画像検査について「正当化」、つまり医学的に必要な検査のみを実施することが医療被ばく低減の重要原則であるとしています。したがって、後遺障害申請のためだけに意味の乏しいCTを繰り返すという考え方は避けるべきです。

では「撮り直し」が必要になるのはどんなとき?

追加検査が意味を持つのは、既存画像で確認できない医学的な疑問がある場合です。例えば、X線のみで微細骨折が疑われる→CT・MRIを検討骨の形態を詳しく確認したい→CT靱帯・半月板・軟部組織を評価したい→MRI事故後の骨癒合・変形経過を確認したい→時期を空けたX線・CTなどです。日本整形外科学会も、通常のX線では診断しにくい骨折でCTが有用であることや、舟状骨骨折ではCT・MRIによる確認が有用であることを説明しています。

つまり撮り直しは、法律上必要だからではなく、医学的に確認すべき対象があるから行うものです。

画像データはどうやって用意する?

画像鑑定では、印刷されたX線写真の写真スマートフォンで撮影したMRI画面ではなく、できれば医療機関が保有している元の画像データを使用します。一般にはCD・DVD等へDICOM形式で保存して提供されることがあります。日本医師会の診療情報提供指針では、診療記録等にはX線写真や各種検査記録などの画像も含まれ、患者本人から開示の求めがあった場合には原則として応じる考え方が示されています。具体的な申請方法や費用は医療機関ごとに異なります。

画像鑑定を検討する際には、事故直後の画像だけではなく、必要に応じて治療途中・症状固定時の画像も取得します。

読影報告書も一緒に確認する

画像データだけではなく、病院で作成された既存の読影報告書も確認します。例えば、

  • 画像そのものには所見がある
  • 報告書にも書いてある
  • しかし後遺障害診断書に反映されていない

という場合があります。この場合は、新しい画像鑑定を行う前に、既存読影報告書を主治医へ示して診断書との関係を確認するという方法もあります。画像鑑定は万能カードではありません。

すでに存在する医証を先に全部確認することが重要です。

【画像鑑定の流れ】当サイトの医証サービスで想定する7ステップ

STEP1 認定結果・争点の確認

まず、

  • 非該当なのか
  • 14級なのか
  • 12級を検討しているのか
  • 可動域障害なのか
  • 神経症状なのか

を整理します。画像鑑定の目的を決めずに画像を大量に送っても、実務的ではありません。

STEP2 既存医療資料を確認

  • 診断書
  • 後遺障害診断書
  • 診療録
  • 読影報告書
  • 手術記録
  • リハビリ記録

などを確認します。

STEP3 画像データを取得

事故直後から症状固定までのX線、CT、MRI等のうち、争点に関係する画像を医療機関から取得します。

STEP4 専門医へ鑑定・再読影を依頼

症状や争点を整理したうえで、放射線診断専門医等、対象画像を評価できる専門医へ依頼します。画像だけ渡すのではなく、

  • 事故日
  • 受傷部位
  • 症状
  • これまでの診断
  • 確認してほしい点

を伝えることが重要です。

STEP5 鑑定結果を既存診療と照合

画像鑑定で新しい所見が指摘されたとしても、その所見と現在の症状が一致するのか事故との関連は医学的に説明できるのかを確認します。

STEP6 主治医への照会・追加医証を検討

必要に応じて鑑定結果を主治医へ示し、「この所見について先生はどのように評価されますか」と確認します。主治医自身が医学的に妥当と判断すれば、意見書・回答書等へ反映してもらうことを検討します。

STEP7 後遺障害申請・異議申立てへ使用

新たな客観所見として意味がある場合には、

  • 鑑定書
  • 画像
  • 主治医の意見
  • その他の医学資料

を組み合わせて提出します。

【重要】外部医師の鑑定書だけ提出すればよいわけではない

画像鑑定書を取得すると、「これを出せば認定が変わる」と思ってしまうかもしれません。しかし、より説得的なのは、画像鑑定と主治医の医学的評価が整合する状態です。例えば外部専門医が、「CT上、関節面に明らかな段差あり」と評価した。

そして主治医もその画像を確認し、「当該変形が現在の可動域制限に関与していると考える」と医学的に評価した。このように、

画像

↓

主治医の診断

↓

現在の症状

がつながれば説明力が高まります。反対に、外部鑑定医は異常と言う主治医は症状との関係を否定という場合には、なぜ評価が異なるのか整理する必要があります。

画像鑑定医と主治医は役割が違う

画像鑑定医は、主として提供された画像を評価します。一方、主治医は、患者を診察し、治療経過を知り、症状を確認し、身体所見を取り、画像と合わせて診断します。したがって画像鑑定医の意見が常に主治医より「上」という関係ではありません。

役割が異なります。日本医学放射線学会の定義でも、画像診断には読影だけでなく検査適応や報告管理までが含まれ、臨床との連携が重要であるとされています。後遺障害実務では、画像専門医の分析と、実際に患者を診ている主治医の臨床評価を組み合わせることが重要です。

【画像鑑定が効きにくいケース①】症状と画像所見が一致しない

例えば、右手がしびれるのに、画像上確認された異常は左側という場合です。画像異常があっても、症状との位置関係が合わなければ事故後の症状を十分説明できない場合があります。後遺障害では、「画像に異常があるか」だけではなく、その異常が本人の症状を医学的に説明できるかが重要です。

【画像鑑定が効きにくいケース②】加齢性変化しか確認できない

40代、50代、60代と年齢が上がれば、事故とは関係のない変性所見が画像に写ることがあります。

  • 頚椎の骨棘
  • 椎間板変性
  • 膝の変形性変化

などです。これらが見つかっても、今回の事故で生じた所見なのか事故前から存在した所見なのかを区別する必要があります。日本整形外科学会も、外傷性頚部症候群の画像では年齢相応の変性所見がみられることがあり、外傷との関係を区別する必要があるとしています。

【画像鑑定が効きにくいケース③】認定上の問題が画像以外にある

例えば、

  • 通院が長期間途切れている
  • 事故直後の症状記録がない
  • 症状が左右で変化している
  • 検査所見と本人の訴えが一致しない

場合です。こうした問題は、画像鑑定だけでは解決できません。後遺障害認定理由を先に分析し、本当に画像が主要な争点なのかを確認することが重要です。

【画像鑑定が効きにくいケース④】低解像度の画像しかない

画像鑑定は元の画像情報に依存します。スマートフォンでモニターを撮影した画像や、低解像度のJPEG画像では、詳細な評価が難しくなる場合があります。可能であれば、医療機関から提供された元のDICOMデータを利用します。

「画像鑑定」と「セカンドオピニオン」は同じ?

似ていますが、必ずしも同じではありません。セカンドオピニオンは、

  • 診断
  • 治療方針
  • 手術適応

などについて別の医師の医学的意見を求めるものです。画像鑑定は、既存の医用画像を専門的に評価することに重点があります。もちろん実際には、画像鑑定結果をもとに専門医へ診察を受けることもあります。

重要なのは、何を目的に別の医師へ相談するのかを明確にすることです。

遠隔画像診断という方法もある

現在は医用画像がデジタル化されているため、画像を別施設の専門医へ送って読影してもらう仕組みもあります。日本医学放射線学会の遠隔画像診断ガイドラインでも、遠隔画像診断は、専門家による読影が難しい医療環境に専門医の画像診断能力を提供し、医療の質を高めることを目的の一つとしています。交通事故の画像鑑定でも、実際の運用では画像データを安全な方法で提供し、遠隔で評価を受ける方法が考えられます。

ただし、患者情報医療情報を取り扱うため、適切な情報管理が必要です。

【異議申立て】画像鑑定をどう使う?

例えば初回申請で、14級9号にも該当せず非該当となったとします。認定理由では、「画像上、外傷性の異常所見が認められない」ことが理由の一つになっていた。そこで既存CTを専門医へ再読影してもらったところ、事故部位に一致する微細な骨折痕または外傷後変化が指摘された。

この場合、鑑定書だけを提出するのではなく、

  • 事故直後からの症状
  • 治療経過
  • 診察所見
  • 当該画像所見
  • 主治医の意見

を組み合わせます。国土交通省は、異議申立てでは新たな立証資料を添付することができると案内しています。したがって画像鑑定は、初回申請時にはなかった新しい医学的評価として意味を持つ場合があります。

画像鑑定を受けるタイミング

必ず非該当になってから行う必要はありません。例えば症状固定前に、

  • 画像と症状がどうしても合わない
  • 主治医から画像上の説明を十分受けられていない
  • 重い可動域制限があるのに原因が明確でない
  • 複雑な関節内骨折である

という場合には、後遺障害申請前から画像資料を整理する意味があります。ただし、すべての骨折案件で外部画像鑑定を行う必要はありません。通常の画像と主治医の診断で障害原因が十分明確なら、追加鑑定によるメリットが小さい場合もあります。

【やってはいけない対応】画像鑑定で避けるべき6つのこと

① 「12級になる所見を探してください」と依頼する

画像鑑定の目的は、希望する等級に必要な異常を探すことではありません。画像を医学的に評価してもらいます。

② 異常所見だけを切り取る

画像上所見があっても、事故や症状との関係が重要です。

③ 既存画像を確認せず同じ検査を繰り返す

特にCTは放射線被ばくがあります。医学的必要性を確認します。

④ スマートフォン撮影画像だけで詳細鑑定を求める

可能であれば元画像データを取得します。

⑤ 主治医の診療を無視して外部鑑定だけを提出する

可能であれば主治医にも鑑定所見について確認します。

⑥ 画像鑑定で等級認定が保証されるように説明する

画像鑑定は追加医証の一つであり、認定結果を保証するものではありません。

【実務チェックリスト】画像鑑定前に確認する資料

認定関係

  • 後遺障害認定結果
  • 認定理由
  • 初回申請で提出した画像
  • 初回申請で提出した診断書

医療関係

  • 事故直後のX線
  • CT
  • MRI
  • 画像診断報告書
  • 診療録
  • 手術記録
  • リハビリ記録
  • 後遺障害診断書

確認したい医学的テーマ

  • 微細骨折の有無
  • 骨癒合状態
  • 関節面の段差・陥没
  • 変形治癒
  • 偽関節
  • 椎間板・神経周辺の状態
  • 靱帯・半月板等の損傷
  • 症状との医学的整合性

この3つを整理してから専門医へ依頼すると、「全部見てください」ではなく、何を確認すべき鑑定なのかを明確にできます。

【医証サービス】画像鑑定だけではなく「何に使うか」まで設計する

交通事故の画像鑑定で重要なのは、鑑定書を1枚作ることではありません。その鑑定結果を、

  • 後遺障害診断書の補足
  • 主治医への医療照会
  • 初回被害者請求
  • 異議申立て
  • 損害賠償交渉

のどこへ使うのかを考えます。当サイトの医証サービスでは、案件に応じて、

  • 既存医療資料の確認
  • 画像データの整理
  • 画像鑑定の必要性判断
  • 外部専門医への再読影依頼
  • 鑑定結果と症状の整合性確認
  • 主治医への照会
  • 後遺障害申請・異議申立てへの組み込み

という流れを検討します。単純に、「画像鑑定を取る」のではなく、「不足している医学的立証を何で補うか」という観点から判断します。

画像鑑定を依頼した方がよい可能性があるケース

画像鑑定を検討する意味が比較的大きいのは、

  • 強い症状が残っているのに画像異常なしとされている
  • X線のみで微細骨折の可能性がある
  • 粉砕骨折・関節内骨折である
  • CTの詳細評価が後遺障害に関係する
  • 事故直後と症状固定時の画像を比較したい
  • 神経症状とMRI所見との整合性を確認したい
  • 後遺障害認定理由で客観所見不足を指摘された
  • 異議申立てを検討している

というケースです。一方、

  • 画像以外の理由で非該当になっている
  • すでに客観所見が十分明確
  • 新たな鑑定をしても争点が変わらない

というケースでは、優先度が低い場合があります。

弁護士へ相談するタイミング

次のようなケースでは、画像鑑定を単独で依頼する前に、後遺障害申請全体を確認する意味があります。

  • 非該当になった
  • 14級ではなく12級を検討している
  • 粉砕骨折・関節内骨折である
  • 画像と症状の説明が合わない
  • 主治医から「画像上異常なし」と言われたが症状が強い
  • 読影報告書と後遺障害診断書が一致していない
  • 異議申立てを予定している
  • 新しいCT・MRIを撮るべきか迷っている
  • どの専門医に画像を評価してもらうべきか分からない
  • 鑑定結果をどのように申請へ使用すればよいか分からない

なぜなら、画像鑑定が必要かどうかは、認定理由によって変わるからです。

まとめ:画像鑑定の目的は「異常を作る」のではなく「すでに存在する所見を正確に拾い上げる」こと

この記事のポイントを整理します。

  1. 01画像鑑定とは、既存のX線・CT・MRI等を外部の専門医が再評価する医証作成手段です。
  2. 02日本医学放射線学会は、画像診断について放射線診断専門医による専門的評価を重要なものとして位置付けています。
  3. 03X線は骨折や骨癒合、CTは粉砕・関節面・複雑な骨形態、MRIは神経周囲・椎間板・靱帯等の軟部組織評価にそれぞれ特徴があります。
  4. 04通常のX線では分かりにくい骨折が存在し、必要に応じてCT・MRIが有用な場合があります。
  5. 05画像鑑定では新たな検査を行うのではなく、すでにある画像を再読影することが基本です。
  6. 06新たな撮影は、既存画像では医学的疑問を解決できない場合に検討します。
  7. 07MRI等に異常が見つかっても、その所見が交通事故によるものとは限らず、加齢性変化等との区別が必要です。
  8. 08後遺障害認定では、画像所見だけでなく事故、症状、治療経過、診察・検査所見との整合性が重要です。
  9. 09非該当・低い等級となった場合には、まず認定理由を確認し、画像の客観所見不足が争点なのかを判断します。
  10. 10新たな画像鑑定書は異議申立ての追加立証資料となる可能性がありますが、等級変更を保証するものではありません。

交通事故の後遺障害では、「画像に何か写っていれば勝ち」ではありません。反対に、「最初の診断で異常なしと言われたから、画像には何もない」とも限りません。X線では見つけにくい骨折があります。

CTでなければ分かりにくい骨の変形があります。MRIで評価する軟部組織があります。そして、同じ画像でも、専門的に改めて確認することで所見の意味が整理される場合があります。

重要なのは、何のために、その画像をもう一度見るのかです。症状の医学的原因を確認するのか。関節面の変形を証明するのか。

神経症状との整合性を確認するのか。異議申立ての新たな立証資料を作るのか。目的を明確にした画像鑑定ほど、後遺障害実務では意味を持ちます。

画像に異常がないとして後遺障害が認められなかった方へ

交通事故後に痛み、しびれ、可動域制限が残っているにもかかわらず、

  • 「画像に異常がない」
  • 「骨折は治っている」
  • 「MRIに後遺障害の原因となる所見はない」

などとして非該当や想定より低い等級となった場合には、まず認定理由とこれまで提出した医療資料を確認してください。特に、

  • 事故直後はX線しか撮影していない
  • 粉砕骨折・関節内骨折でCT評価が重要
  • MRIの読影報告書と診断書の内容が違う
  • 過去画像と現在画像を比較していない
  • 客観的画像所見不足を理由に非該当となった

という場合には、外部専門医による画像鑑定・再読影を検討する意味がある可能性があります。当サイトでは、案件に応じて、

  • 画像鑑定を行うべき争点かどうかの確認
  • X線・CT・MRI等の画像データ整理
  • 既存読影報告書の確認
  • 外部専門医への画像鑑定依頼
  • 鑑定結果の医学的整合性確認
  • 主治医への照会
  • 後遺障害申請・異議申立て資料への反映

までを医証作成の一環として検討します。ただし、画像鑑定によって新しい所見が必ず発見されるわけではなく、特定の後遺障害等級が認定されることを保証するものでもありません。また、必要性の乏しいCT・MRI等を後遺障害申請だけを目的として繰り返すことも適切ではありません。

まず既存の医療資料と認定理由を精査し、本当に不足している医学的証拠が「画像」なのかを判断することが重要です。

※本記事は一般的な交通事故、画像診断、画像鑑定および後遺障害制度について解説するものであり、個別の法的・医学的アドバイスを目的とするものではありません。画像鑑定の必要性、追加検査の適応、画像所見と症状・事故との因果関係については、受傷部位、事故態様、診療経過、既往症、撮像条件等によって個別に判断されます。具体的な画像診断・検査については担当医・放射線診断専門医等、後遺障害申請・異議申立て・損害賠償については交通事故に詳しい弁護士等へご相談ください。